魚油(読み)ギョユ

デジタル大辞泉 「魚油」の意味・読み・例文・類語

ぎょ‐ゆ【魚油】

イワシニシンサバなどを圧搾して採取した脂肪油魚臭があり、不飽和脂肪酸含有が多い。硬化油石鹸せっけんなどの原料
[類語]脂肪脂肪油油脂香油オイル石油原油重油軽油灯油ガソリン揮発油精油グリース

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精選版 日本国語大辞典 「魚油」の意味・読み・例文・類語

ぎょ‐ゆ【魚油】

〘名〙 (「ゆ」は「油」の呉音) 魚類からしぼりとる油。鰯油(いわしゆ)、鱈油(たらゆ)鰊油(にしんゆ)の類。灯火用のほかせっけん製造、薬用などに用いる。ぎょゆう。
諸問屋再興調‐二一・宝暦五年(1755)午九月手形帳書抜(古事類苑・器用二一)「当年は鰯猟多著船仕著間、先年之通魚油煎申度奉願候」

ぎょ‐ゆう ‥イウ【魚油】

〘名〙 (「ゆう」は「油」の漢音) =ぎょゆ(魚油)

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改訂新版 世界大百科事典 「魚油」の意味・わかりやすい解説

魚油 (ぎょゆ)
fish oil

魚類から採取して得られる脂肪油。通常,イワシ,ニシン,サンマなどの大量に捕獲される魚種を原料とする。魚油の名称はしばしば海産動物油と同意語として用いられる。魚油は固体酸としてはパルミチン酸,少量のステアリン酸ミリスチン酸アラキジン酸等を,また液体酸としてオレイン酸等を,ほかに高度不飽和脂肪酸を含有し,また特有成分としてヘキサデセン酸を含む。他の油に比べて組成脂肪酸の種類がきわめて多く,また不ケン化物含量も大きく,独特な生ぐさい不快臭をもつ。魚油の高度不飽和脂肪酸は容易に空気中で酸化され,悪臭の原因となる。そのため精製脱臭後もしばらく空気中に放置すると,また臭気を放つ。魚油を利用する一つの方法として,工業的にはこれら不飽和脂肪酸を水素添加する。この工程を硬化といい,その製品を硬化油という。硬化には通常,金属ニッケル触媒を用いる。硬化後は油は酸化に対して安定になり,悪臭を放たなくなるが,融点は上昇して常温付近になる。魚油は不飽和度の高いわりには乾燥性に劣る。おもに硬化油としてマーガリンショートニング,あるいはセッケン原料として用い,魚油そのままでは製革用油,重合油,ボイル油,低級塗料用油とされる。最近,魚油中の高度不飽和脂肪酸,たとえばエイコサペンタエン酸(EPA)が高血圧,老化の防止に有効であることから,健康食品として注目されている。
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百科事典マイペディア 「魚油」の意味・わかりやすい解説

魚油【ぎょゆ】

魚から採取した油。普通は肝油を含めない。サンマ,イワシ,サメなどを蒸し煮,圧搾するほか,水産物加工の廃棄物(内臓など)も原料とする。不飽和脂肪酸を多く含み,酸化されやすく,特有の臭気をもつので,精製後,水素添加して硬化油とし,主としてマーガリン,セッケンの原料にする。近年,魚油中の高度不飽和脂肪酸,たとえばエイコサペンタエン酸(EPA)が高血圧,老化の防止に有効であることから,健康食品として注目されている。→DHA
→関連項目イワシ(鰯)魚肥脱臭動物油脂

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「魚油」の意味・わかりやすい解説

魚油
ぎょゆ
fish oil

イワシ、サバなどから得られる脂肪油。含油量は一般に15~20%である。細分し蒸し煮した魚を、圧搾して採油するが、収率は不安定である。魚油は高度不飽和脂肪酸(1分子中に二重結合を4、5あるいは6個含有している)を30%程度含んでおり、それらの炭素数は18、20あるいは22である。ヨウ素価は180程度。なお、かなりの量の飽和脂肪酸とモノエン酸(二重結合を1個含有)を含む。このために魚油の乾燥膜の性状は劣る。冷却濾過(ろか)した魚油は塗料に用いうるが、品質はよくない。かなりの量のモノエン酸を含むからである。脱臭、水素添加油は食用油脂工業に用いられる。また、せっけん、ペイント、印刷インキ、製革に使用される。

 なお、魚油とは別途に取り扱われるタラあるいはサメの肝油は、溶出法により採油され、ビタミンAとDを含み、医薬品となる。サメの肝油はスクアレンを含む。

[福住一雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「魚油」の意味・わかりやすい解説

魚油
ぎょゆ
fish oil

魚類から得た油脂。たとえばいわし油,さんま油,にしん油など。一般に高度不飽和酸を多く含み,酸化されやすく,不鹸化物含有量も多い。特有の臭気がある。硬化油としたのちマーガリン,ショートニングや石鹸などの原料とする。重合油,製革用油,ボイル油などにも利用される。

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普及版 字通 「魚油」の読み・字形・画数・意味

【魚油】ぎよゆ

魚の油。

字通「魚」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「魚油」の解説

魚油

 魚の油.通常湿式融出法で製造する.硬化油として食用にしたり工業用にする.

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