魚付林(読み)うおつきばやし

精選版 日本国語大辞典 「魚付林」の意味・読み・例文・類語

うおつき‐ばやし うをつき‥【魚付林】

〘名〙 魚類を誘い集めて保護するために、海岸湖岸川岸などに植えつけられた黒松などの林。魚の好む暗所をつくり、森林風波を防いで水温を安定させるほか、えさとなる水中微生物の発生をうながすとされる。明治一〇年代から森林法施行前後にかけて特に力が入れられた。うおつけばやし。うおつきりん。

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デジタル大辞泉 「魚付林」の意味・読み・例文・類語

うおつき‐りん〔うをつき‐〕【魚付(き)林】

保安林の一。魚類の繁殖と保護を目的に、伐採制限または禁止している岸近くの森林。木につく虫・微生物が水中に入ってえさとなり、また水面上に大きな影を落とし、魚類の好む暗所をつくる。うおつきばやし。

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改訂新版 世界大百科事典 「魚付林」の意味・わかりやすい解説

魚付林 (うおつきりん)

魚群を集める目的で設けられた海岸沿いの森林。保安林の一つである。魚付林の効果として,(1)豊富に栄養塩類を流したり有機物を供給してプランクトンの繁殖を促す,(2)森林が海面に落とす影が,魚類の休息産卵に適した環境をつくる,(3)森林があることによって,魚類の嫌う刺激性の反射光線が生じない,などが挙げられている。魚付林には古くからたいせつに守られてきたものも多かった。たとえば京都の伊根村城山の魚付林は,嘉永年間に伐採され漁獲量を減じたが,その後村民の申合せにより森林の伐採を禁じ保護を続けた。兵庫の旧城崎郡港村でも沿岸山林の乱伐の結果漁獲量が減じたが,保安林になり樹木が繁茂してからは漁獲を増した。最近では海岸の風景林や保健林としての価値が高くなっている。休日に釣りをする遊漁人口も増加し,瀬戸内海相模湾など都市に近い海岸では“魚をつける”意義が高い。
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百科事典マイペディア 「魚付林」の意味・わかりやすい解説

魚付林【うおつきりん】

海岸,湖岸,河岸などに,魚群誘致や漁場保全の目的で植林,または天然林を育成したもの。保安林の一つ。魚類の休息や産卵に適した日陰を水面に与え,腐葉土の良質な栄養分の補給により水中微生物の発生を促し,水質の保全,水量の安定に役だつなどの効果がある。また,風景林や保健林としての意義も大きい。
→関連項目栽培漁業水産資源

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