魑魅魍魎(読み)ちみもうりょう

精選版 日本国語大辞典 「魑魅魍魎」の意味・読み・例文・類語

ちみ‐もうりょう ‥マウリャウ【魑魅魍魎】

〘名〙 (「魑魅」は山林の気から生じるばけもの、「魍魎」は山川木石精霊) いろいろな妖怪変化。種々のばけもの。
※百座法談(1110)閏七月八日「諸(もろもろ)の鬼魅魍両(ちミマウりゃう)みちみてらむ」
浄瑠璃伽羅先代萩(1785)三「ちみもふりゃうをしりぞけんは、掌(たなごころ)をもって大地を打よりいと安し」 〔春秋左伝‐宣公三年〕

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デジタル大辞泉 「魑魅魍魎」の意味・読み・例文・類語

ちみ‐もうりょう〔‐マウリヤウ〕【×魑魅××魎】

《「魍魎」は山川・木石の精霊》いろいろな化け物。さまざまな妖怪変化へんげ。「魑魅魍魎跋扈ばっこする」

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四字熟語を知る辞典 「魑魅魍魎」の解説

魑魅魍魎

いろいろな妖怪変化。種々のばけもの。

[使用例] 西洋ろうそくの光りは、もうろうと室内を照らして、さまざまの器物や置き物の黒い影が、魑魅魍魎のばっするような姿を、四方の壁へ長く大きく映している[谷崎潤一郎*少年|1911]

[使用例] やっと瓦屋根のついた門のこうにたどりついてみると、三日も不在にした家のなかには魑魅魍魎がはびこり、庭のどこかに女がひそんでいるのではないかと思ってしまう[島尾敏雄*死の棘|1960]

[使用例] このうちややごわいのはえいざんの坊主どもだが、ろくの兵を向ければ、まず十日で落ちる。くすのきまさしげや赤松のりむらなどはそのあたりの山に住む魑魅魍魎のたぐい、なんで恐れることがあろうぞ[新田次郎*新田よしさだ|1978]

[解説] 要するに、ばけもののこと。中国・戦国時代の「しゅんじゅうでん」では「魑」は山の神、「魅」は怪物、「魍魎」は水の神と説明します。他の書物ではまた説明が違うので、あまり厳密に考えなくてもかまわないでしょう。
 画数が多く、書くのが難しい熟語の代表です。「魑魅罔両」とも書き、こちらのほうが本来のようです。でも、熟語としては、四字とも字形をそろえた「魑魅魍魎」が多く使われます。
 熟語のそれぞれ漢字に、おそろいの部首を加えることはよくあります。たとえば、「丁寧」は、口で丁寧に言うことを強調して「叮嚀」とも書きます。「コーヒー」「リー」など、当て字に同じ偏を加えることもあります。「魑魅魍魎」も、漢字の形をわざわざそろえた熟語の例です。
 現代日本語で「魑魅魍魎」と言えば、単なるばけものではなく、多くは、ばけもののように得体の知れない人間たちを指します。「魑魅魍魎がはびこる政治の世界」のように使います。

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改訂新版 世界大百科事典 「魑魅魍魎」の意味・わかりやすい解説

魑魅魍魎 (ちみもうりょう)

山川の精霊をいう。また螭蜽とも書く。中国の《左伝》の注に〈魑魅は山川の異気の生む所にして人に害をなすもの〉,また,《国語》の〈木石の怪を夔蜽(きもうりよう)と曰(い)う〉の注に〈蜽は山精,好んで人の声を斅(まな)びて人を迷惑(まどわ)す〉とあるように,こだま,すだまの類をさす。これらは地方的な精霊であるため,中央集権的な神々の体制には服さず,それゆえ,人々が何の準備もなくこうした精霊と遭遇するのは危険であるとされた。
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