髱
たぼ
上方(かみがた)(関西)では髩(つと)という。女性の結髪の後部に張り出した髪をたわめてつくった部分の称。日本髪の美しさのポイントとなる部分でもある。中世以降、女性は下げ髪(垂髪)であったが、のち唐輪髷(からわまげ)となって髷ができても髱はなかったが、江戸時代初期の被(かぶ)り物禁止以降、素顔で歩くようになって、後頭部に髪をまとめることがおこり、これを髱とよんだ。当時の髱は鴎(かもめ)の腹の形から鴎髩(かもめづと)といった。18世紀に入ると、髱が垂れ下がって着物の襟を汚すところから、髱差しを利用して反り返る形をとるようになり、せきれい髱、雀(すずめ)髱が生じた。さらに18世紀後半になると、鬢(びん)が張り出してきた結果として髱は小さくなった。また19世紀に入ると鬢が縮小したのにつれて、髱差しが再度利用されることになった。この結髪法は昭和20年代、洋髪が盛行するまで、和服を日常着とする女性の間に普及した。
[遠藤 武]
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髱【たぼ】
日本髪の部分名称で,後頭部から耳裏の部分をいう。江戸時代の女性の結髪で髱の形は多くの変化をみせ,寛文ごろから元禄を経て,宝暦ごろに最も発達した。自然に突き出す形から次第に技巧を加え,髱刺しという型を用いて,せきれい髱,かもめ髱などと呼ばれる曲線を帯びたものが作られた。なお関西では,髱のことを〈つと〉と呼ぶ。
→関連項目髪形|兵庫髷|髷
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デジタル大辞泉
「髱」の意味・読み・例文・類語
たぼ【×髱/×髩】
1 日本髪で、襟足にそって背中の方に張り出した部分。たぼがみ。たぶ。関西では「つと」という。
2 若い女性をさす俗な言い方。
「いい―でもあったら」〈滑・膝栗毛・初〉
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世界大百科事典内の髱の言及
【髪形】より
…貴族や武家の女性は江戸前期までは中世以来の垂髪を踏襲していたが,庶民の間では,髷を結うことに積極的であった女歌舞伎や遊里の女性たちを中心として広まり,江戸中期以後には,島田髷や勝山髷が一般女性の間で広く結われるようになり,日本結髪史上の黄金時代ともいわれる多様な髪形の誕生を見たのである。 江戸時代女髷の概要を述べると,中期以降における特徴として,髪を前髪,髷,両鬢(びん),髱(たぼ)の五つに分髪して結いあげる形式が生まれ,後世の日本髪の基礎となった。この分髪形式は同時に生まれたわけではなく,それぞれの発達経路が少しずつ異なる。…
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