高名(読み)こうみょう

精選版 日本国語大辞典 「高名」の意味・読み・例文・類語

こう‐みょう カウミャウ【高名】

〘名〙 (「みょう」は「名」の呉音)
① 高貴な名前。
万葉(8C後)六・一〇〇九・左注「辞皇族之高名外家之橘姓已訖」
② (形動) 名声が高いこと。有名なこと。また、そのさまや、その名。こうめい
※枕(10C終)一〇三「これやこのかう名のゑぬたき」
※若木集(1377頃)和遠蔵主寄韻「南来万里到中国、久聞高名相識
③ (━する) てがらをたてること。武功をたてること。また、そのてがら。功名
※康頼宝物集(1179頃)上「桂川渡りに高名する」
※浮世草子・武家義理物語(1688)四「過にし関ヶ原陣に高名(カウミャウ)其隠れなき何の守とかや孫娘
[語誌](1)漢語原義は、高い名声、すなわち、立派だ、あるいは優れているという世間的評価の意であり、挙例の「枕草子」をはじめとして、平安末期までは、その意味の用例がほとんどである。
(2)鎌倉初期から、特に軍記物語において、③の意味用法が派生し、以後、この意味の用例が圧倒的に多くなる。
(3)もと、「高名」の字音についてはカウミョウ、カウメイの二通りの読み方があったが、別にコウメイと読まれた「功名」があって、コウ、カウの区別が乱れた室町末期に至ると、意味的近似から混同する例が現われ、江戸時代には、ミョウ、メイの弁別意識も薄れて混同が進み、明治以降は、手柄の意の「コウミョウ」を、専ら「功名」と表記するようになった。→「こうみょう(功名)」の語誌

こう‐めい カウ‥【高名】

〘名〙 (「めい」は「名」の慣用音)
① (形動) =こうみょう(高名)
平家(13C前)六「信濃に有し木曾路河とうたはれけるぞ、時にとっての高名(カウメイ)(高良本ルビ)なる」
人情本春色梅児誉美(1832‐33)後「高名(カウメイ)書画の花押にくはしく」 〔韓非子‐十過〕
② 相手を敬って、その名前をいう語。お名前。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五「『わっちゃア、十返舎一九と申やす』『ハハア御高名(カウメイ)うけたまはりおよびました、十返舎先生でござりますか』」
[語誌]→「こうみょう(高名)」の語誌

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デジタル大辞泉 「高名」の意味・読み・例文・類語

こう‐めい〔カウ‐〕【高名】

[名・形動]
高い評価を受け、広く一般の人々に名前を知られていること。また、そのさま。こうみょう。「高名な作家」
相手を敬って、その名をいう語。「御高名はかねがね承っております」
有名[用法]
[類語](1美名名声名聞盛名英名令名栄冠栄光栄誉光栄名誉誉れ光輝栄名声誉勇名雷名威名佳名驍名ぎょうめい嬌名きょうめい好評有名知名著名名高い名うて誇り面目めんぼく名利余栄家名いさお勲功巨歩偉功殊勲誉望雷名功名功成り名遂げる死に花死に花を咲かせる名代名前評判名立たる名が売れる顔が売れる音に聞く世に出る世に聞こえる知名度名が有る名が通る名をはせる名を残す名を成す顔が立つ面目を施す一花咲かせる錦を飾る名をあげる名を売る名を得る名を立てる名を遂げる/(2芳名尊名貴名

こう‐みょう〔カウミヤウ〕【高名】

[名・形動]
こうめい(高名)1」に同じ。
手柄を立てること。特に、戦場での手柄。武功。功名。
「この人一期の―とおぼえし事は」〈平家・四〉

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改訂新版 世界大百科事典 「高名」の意味・わかりやすい解説

高名 (こうみょう)

戦場において忠功をつくし武名をはせること。功名ともいう。これを記録した帳簿を高名帳といった。一般に,敵の首級とともに,その所持品,冑,刀などの武具を戦利の証拠として奪うことを分捕(ぶんどり)高名といった。分捕高名の語は《平家物語》にもすでに散見する。高名には報酬がともなうが,それは手柄の大小によりさまざまであった。すなわち,所領の給与をはじめ武器,衣類あるいは黄金,砂金なども与えられ,時として姓名を付与する場合や,軍功を録しこれを賞する感状(かんじよう)が下賜されることもあった。本来,弓矢を主体とした個人戦では,一騎打ちによる組打ちが高名の一番とされ,ついで太刀打ち・槍・弓という順であった。しかし足軽が活躍する中世後期の戦闘形態では,団体戦での槍の機能が重視されるようになり,槍先の功名を1位とする風潮が生じた。いずれにしても,武器が敵に接近した場合ほど,手柄の度合は大きいとされた。
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普及版 字通 「高名」の読み・字形・画数・意味

【高名】こうめい

盛名。

字通「高」の項目を見る

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