骨髄系腫瘍の分類

内科学 第10版 「骨髄系腫瘍の分類」の解説

骨髄系腫瘍の分類(造血器腫瘍のWHO分類)

(1)骨髄系腫瘍の分類
 骨髄腫瘍は大きく,表14-6-1のように6個のカテゴリーに分けられそれぞれに細分類がなされている.
a.骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neopla­sms:MPN
 骨髄増殖性腫瘍は造血幹細胞の異常に起因する単クローン性の腫瘍で,表14-6-2にあげる8病型からなっている.いずれも造血細胞増殖を基本的性格とするが,慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)では顆粒球系細胞を中心とした細胞増殖がみられ,真性多血症(polycythemia vera:PV)では主として赤血球が,本態性血小板血症(essential thrombocythaemia:ET)では血小板が,原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)では髄外での造血が最も強く現れる.この中でCMLはBCR-ABL融合遺伝子によって特徴づけられる疾患単位で,ほかの3者とは病態が明確に異なるためCML以外のMPNの診断にはBCR-ABL陰性が必要である.PV,ET,PMFの三者には,頻度は異なるものの,共通してJAK2遺伝子のV617F変異がみられる.PVでは95%に,ET,PMFでは約半数である.さらにこれらの病型は相互に移行することもあり,こうしたことからも,疾患としての共通性が理解できる.c-MPL変異はET,PMFに低頻度にみられる.また,マスト細胞症ではc-KIT
変異が95%以上に認められる.こうした遺伝子異常も診断に組み込まれている.
b.好酸球増加症とPGDFRA,PDGFRB,またはFGFR遺伝子異常を有する骨髄性/リンパ性腫瘍
 ここに含まれる腫瘍は好酸球増加を伴うだけではなく,ときにリンパ系腫瘍も起こしてくる.いずれかの遺伝子が再構成を起こしていることが診断に必須であり,疾患単位を遺伝子変異で規定したカテゴリーである.
c.骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(myelodysplastic/myeloproliferative neoplasms:MDS/MPN)
 表14-6-3に示すように4病型と1つの暫定病型からなる.ここに含まれる疾患はMPNの特徴と同時に異形成を持つ.BCR-ABL,PGDFRA/B,FGFRのような遺伝子異常はないが若年性骨髄単球性白血病(juvenile myelomonocytic leukemia:JMML)におけるRAS pathwayの遺伝子変異は特徴的である.
d.骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndro­mes:MDS
 無効造血による血球減少と白血病移行,形態的には異形成を特徴とする造血器腫瘍で,表14-6-4のように分類される.末梢血,骨髄の芽球割合,異形成のみられる血球系統,環状鉄芽球といった形態所見に加えて,MDSに高頻度にみられる染色体異常によっても診断,分類されるようになった.
e.急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML
 末梢血または骨髄中に芽球が20%以上認められると急性白血病と診断され,その芽球が骨髄系造血細胞であればAMLの診断となる.病型分類(表14-6-5)には,特異的遺伝子異常の存在,芽球背景の成熟細胞における異形成の存在,化学療法・放射線療法の既往によって分類される3つのカテゴリーと,これらでは分類できないものをまとめたAML-NOSがある.AML-NOSの分類は基本的にはFAB分類に準じている.また,髄外に腫瘤を形成するタイプ,Down症候群にみられる造血異常,樹状細胞由来の白血病がここに含まれる.[宮﨑泰司]
■文献
Campo E, Swerdlow SH, et al: The 2008 WHO classification of lymphoid neoplasms and beyond: evolving concepts and practical applications, Blood, 117: 5019-5032, 2011.
Swerdlow SHH, Campo E, et al eds: WHO Classification of Tumors of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, IARC, Lyon, 2008.
Vardiman JW, Thiele J, et al: The 2008 revision of the World Health Organization (WHO) classification of myeloid neoplasms and acute leukemia: rationale and important changes, Blood, 114: 937-951, 2009.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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