驟雨(吉行淳之介の小説)(読み)しゅうう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

驟雨(吉行淳之介の小説)
しゅうう

吉行淳之介(じゅんのすけ)の短編小説。1954年(昭和29)2月『文学界』に発表。同年、上半期芥川(あくたがわ)賞を受賞。同10月、新潮社刊の同名の短編集に収録。怠惰な会社員生活を送る青年山村娼婦(しょうふ)の町でなじんだ女道子との間に、性的な関係を通じて微妙な心的交渉をもつに至る経緯を描く。作者の「性と生」への意識をきわめて端的にみせた第一作。この作の終わりに近く、道子との状態から逃れ出ようとする山村の心理が街路樹の贋(にせ)アカシヤの落ち葉、――「緑いろの驟雨」のような落ち葉に表徴されており、このあたりにも作者の独自なイメージが鮮明に浮き出ている。

保昌正夫

『『原色の街・驟雨』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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