驕れるもの久しからず(読み)おごれるものひさしからず

故事成語を知る辞典 「驕れるもの久しからず」の解説

驕れるもの久しからず

思い上がったふるまいをする者は、長くその身を保つことはできない、ということ。

[使用例] 時はしょうの春、世は平家の盛、〈略〉六十余州に到らぬくまなき平家の権勢、驕るもの久しからずとは驕れるもの如何いかで知るべき[高山樗牛*滝口入道|1894]

[使用例] 私たちは、わずか十数年の命運しかもたなかったけれども、この地球上に一つの国家を造ろうとしたのだ。〈略〉おごれるものは久しからずのたとえ通り、それはつかの間に滅びたけれども[高橋和巳堕落|1965]

[由来] 「平家物語―一・おんしょうじゃ」の一節から。一二世紀の終わり、平家は武家でありながら、たいらのきよもりが太政大臣になるなど栄華を極めましたが、権勢をほしいままにして高慢な態度をとったことで、周囲から反感を持たれてしまいました。その結果、清盛が亡くなると、わずか数年のうちに、平家は源氏によって滅ぼされてしまったのでした。有名な「おんしょうじゃの鐘の声、しょぎょうじょうの響き有り。そうじゅの花の色、じょうしゃひっすいことわりを表す」という冒頭部分に続く、「おごれる人も久しからず、只春の夜の夢の如し」は、はかなかった平家の栄華を象徴的に述べた一節です。

[解説] ❶「平家物語」が一三世紀以降、琵琶法師によって全国で弾き語りされたことで、この一節も有名になり、やがて故事成語として使われるようになりました。❷思い上がったふるまいをしている者に対する批判としてだけではなく、思い上がったふるまいをしないようにするための戒めのことばとして使うこともできます。

〔異形〕驕る平家久しからず/驕る平家に二代なし/驕る平家は内より崩れる。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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