駕輿丁(読み)カヨチョウ

デジタル大辞泉 「駕輿丁」の意味・読み・例文・類語

かよ‐ちょう〔‐チヤウ〕【××輿丁】

身分の高い人の駕籠かご輿こしを担ぐ役の者。こしかき。
にはかの事にて―も無かりければ」〈太平記・二〉

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精選版 日本国語大辞典 「駕輿丁」の意味・読み・例文・類語

かよ‐ちょう ‥チャウ【駕輿丁】

〘名〙 貴人駕籠(かご)や輿(こし)を担ぐことを業とする者。こしかき。
※続日本紀‐宝亀一一年(780)三月辛巳「諸司仕丁・駕輿丁等厮丁及三衛府火頭等、徒免庸調、無公家

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改訂新版 世界大百科事典 「駕輿丁」の意味・わかりやすい解説

駕輿丁 (かよちょう)

〈こしかき〉ともいう。奈良時代以降,朝廷に属して,主として天皇の行幸のさいその輿(こし)をかついだり,輿の前後につけた綱を手にとったりして行歩した下級の職員の呼称。《続日本紀》の宝亀11年(780)3月辛巳条にこの語が見え,駕輿丁がその任務に従事することで庸調を免除されていたのが知られる。平安時代,927年(延長5)に成った《延喜式》によると,駕輿丁は〈四府(しふ)〉,すなわち左右近衛府と左右兵衛府とに直属し,前者では左右各100人,計200人が,また後者では左右各50人,計100人が従事した。官舎は都の〈諸司厨町(しよしくりやまち)〉の一角におかれ,家族生活を営みつつ四府の輿宿(くるまやど)(車庫控室)に出勤した。鎌倉時代には公費逼迫俸給にも事欠くようになり,朝廷の了解のもとで課税は免除されながら諸種の商工業を営み,生活の資とするものが増加して,四府駕輿丁座(しふのかよちようざ)という同業者組織も生まれた。以降,室町時代にかけて,課税免除の特権に魅力を感じた商工業者の中から駕輿丁に加えられることを希望する者が続出した。駕輿丁座の中には,紙折敷(かみおしき),薬並びに唐物(からもの),白布,酒麴(しゆきく)並びに酒,馬,銅,材木,味噌,高利貸,素麵(そうめん),綿などを扱って課税免除の特権のみを有する座組織と,錦並びに組(くみ)(組糸),鳥,古鉄,絹,帷(かたびら),呉服,米などの専売権をも併有する座組織とが形成されていた。天下統一後は営業上の特権は解消されたが,四府駕輿丁座の〈座衆〉であることは商工市民にとっては名誉と意識された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「駕輿丁」の意味・わかりやすい解説

駕輿丁
かよちょう

古代,左右の近衛,兵衛府に属して輿 (こし) をかついだ人足。これらの人々が鎌倉時代以降は商工業に従事し駕輿丁座を組織,物資の運搬,特に米,呉服,鋤,鍬などには専売特権が与えられて栄えた。

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世界大百科事典(旧版)内の駕輿丁の言及

【駕輿丁】より

…奈良時代以降,朝廷に属して,主として天皇の行幸のさいその輿(こし)をかついだり,輿の前後につけた綱を手にとったりして行歩した下級の職員の呼称。《続日本紀》の宝亀11年(780)3月辛巳条にこの語が見え,駕輿丁がその任務に従事することで庸調を免除されていたのが知られる。平安時代,927年(延長5)に成った《延喜式》によると,駕輿丁は〈四府(しふ)〉,すなわち左右近衛府と左右兵衛府とに直属し,前者では左右各100人,計200人が,また後者では左右各50人,計100人が従事した。…

【四府駕輿丁座】より

…四府(左右近衛府,左右兵衛府)に属した駕輿丁が組織した商業の座の総称。米,酒,みそ,材木,引物,鍛冶炭,すき柄,白布,茜,錦,絹,呉服,紙折敷(おしき),薬,唐物,馬,古物,鳥,古鉄などの商品を扱った。…

※「駕輿丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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