(読み)こま

精選版 日本国語大辞典 「駒」の意味・読み・例文・類語

こ‐ま【駒】

〘名〙
① 子馬。小さい馬。牡馬(おすうま)をさしていうこともある。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※本朝食鑑(1697)一一「必大按、近世馬一歳称当歳駒(コマ)二歳三歳四歳同称駒」
② (転じて) 馬の総称。
※書紀(720)推古二〇年正月辛巳・歌謡「真蘇我よ 蘇我の子らは 馬ならば 日向の古摩(コマ) 太刀ならば呉(くれ)の真鋤(まさひ)
※源氏(1001‐14頃)紅葉賀「君し来(こ)ばたなれのこまに刈り飼はむさかりすぎたる下葉なりとも」
弦楽器の弦と胴の間にはさんで弦を持ち上げ、弦が妨害を受けずに振動できるようにするもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・崑山集(1651)九「こよひひけこきうの駒も膝月毛〈良直〉」
④ 物の間にはさみ入れる小形の木片。「こまをかう」
⑤ 将棋で、盤上に並べ、それを動かして勝負を争う五角形の小さな木片。王将(玉将)、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩兵の区別があり、それぞれ異なった動き方をする。〔日葡辞書(1603‐04)〕
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「人間の心をもて象棋の棊子(コマ)と見做すときには」
⑥ (⑤から転じて) 自分が自由に動かせる人やもの。「こまが揃う」
⑦ 双六で、盤上を運行させる象牙、水牛角などでつくった円形の小片。
⑧ 賭博(とばく)場で、金銭のかわりに用いる木札。また、それにかわるもの。
※博奕仕方風聞書(1839頃か)「取遣り捗取不申候に付こまと名付」
刺繍糸を巻くのに使うエ字形の糸巻。
⑩ 「こまげた(駒下駄)」の略。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)三「駒弐疋桜の元へぬぎ捨てる」
⑪ 紋所の名。⑤を図案化したもの。丸に駒、三つ並び駒などがある。③を図案化したものもある。
[語誌](1)語源に関して、「高麗(こま)」と関連づける説は、「こま(駒)」の「こ」が甲類であるのに対し、「こま(高麗)」の「こ」は乙類であるから誤り。
(2)「うま」との関係で、歌における使用例は、「万葉集」では「こま」「うま」の両方が見られるが、「うま」の方が優勢。しかし、平安~鎌倉時代八代集では、「こま」が歌語として定着し、「うま」は人名に掛けて用いるといった特別な例外をのぞいて用いられなくなった。

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デジタル大辞泉 「駒」の意味・読み・例文・類語

こ‐ま【駒】

《「」の意》馬。また、子馬。「を進める」「ひょうたんから
将棋・チェス・双六すごろくなどで、盤上に並べて動かすもの。
自分の手中にあって、意志のままに動かせる人や物。「をそろえる」
バイオリン三味線などの弦楽器で、弦を支え、その振動を胴に伝えるために、弦と胴の間に挟むもの。
刺繍糸を巻くときに用いるエの字形をした糸巻き。
物の間にさし入れる小さな木片。「をかう」
紋所の名。将棋の駒や三味線の駒を図案化したもの。
[類語]牡馬ぼば牝馬ひんば子馬小馬若駒名馬麒麟駿馬優駿駄馬駑馬どば白馬青馬軍馬競走馬馬車馬輓馬ばんば引き馬裸馬放れ馬暴れ馬荒馬奔馬種馬当て馬驢馬ろば騾馬らば

く【駒】[漢字項目]

常用漢字] [音]ク(呉)(漢) [訓]こま
〈ク〉小さな馬。また、若い元気な馬。「駒隙くげき白駒
〈こま(ごま)〉「駒下駄黒駒手駒若駒

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改訂新版 世界大百科事典 「駒」の意味・わかりやすい解説

駒 (こま)

弦楽器の部品で,弦を適当な高さに支えて,その振動を胴に伝えて共鳴させる役割をもつもの。英語では,その形から橋に相当するブリッジbridgeという。ギターやマンドリンのように固定式のものと,バイオリンや三味線のように可動式のものがある。和楽器では三味線,胡弓(こきゆう),一弦琴,二弦琴などに使われ,その楽器によって材質,形状,寸法,構造,名称は異なり,さらに三味線だけについてみても,種目,流派,演奏の場などにより各種の駒が使い分けられている。材質は象牙,水牛,べっこう,竹など。形状は三味線に比べて,他の弦楽器の駒は円弧状である。三味線や胡弓では棹の上端に固定させた細長い棒状のものを上駒(かみごま)といい,駒と上駒で弦が支えられている。三味線では一の糸(最低音弦)の部分だけ上駒が省かれており,〈さわり〉(余韻をともなった複雑な音色)のくふうがなされている。三味線では駒の底(台という)の広いものを台広(だいびろ)といい,義太夫や地歌の一部(柳川三味線)で使う。義太夫では穴の両側に鉛を埋め込んである。これを鉛駒とも呼び,地歌でも使うがより小型。台の狭い細駒(ほそごま)または平駒(ひらこま)は長唄など,中間の中広(なかひろ)は清元などで使う。駒の高さは1~2cmである。また忍び駒は練習用として遠方に音が聞こえないように,両端がとくに長く作られた竹製の駒である。琵琶では三味線の根緒(糸を結んであるところ)と駒の機能に相当する部分を履手(ふくじゆ)と称する。箏では弦の中間にあって弦を支え,必要に応じて移動するものは駒とはいわず,(じ)という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「駒」の意味・わかりやすい解説


こま
bridge 英語
Steg ドイツ語
chevalet フランス語
ponticello イタリア語

弦鳴楽器の部分名称。日本語の駒は、本来は「上に物を乗せるもの」の意で、転じて琵琶(びわ)、三味線などの部分名となった。弦鳴楽器の駒は、響板上で、緒止めや糸巻によって両端を固定させた弦の中間に位置し、弦を適度な高さに支えてその振動を響板に伝える役割を果たす。材質(木、象牙(ぞうげ)、竹など多種)、形、大きさ、重さ、位置などの違いによって、音質や奏法に大きな影響を及ぼすので、楽器によってさまざまな種類がある。たとえば、マンドリンやギター、インドのビーナなどの駒は固定されているが、バイオリン属アラビアラバーブ、三味線などの駒は可動である。また棹(さお)の上端に上駒(かみごま)(ナット)とよばれるもう一つの駒をもつものもあり、三味線では上駒にサワリという特殊なくふうがなされている。

[川口明子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「駒」の意味・わかりやすい解説


こま
bridge

弦楽器の部分名称。胴または響板の上のほぼ固定した位置に装置し,弦を適当な高さに支えてその振動を表板に伝えるもの。木製,象牙製,竹製などがあり,形や大きさは楽器により異なる。バイオリン属では駒材を楽器に合せて削り,高さ,厚さ,孔,切込みなど緻密なバランスを保ち移動できるが,ギターやマンドリンでは固定して用いる。東洋,日本のリュート属に多い棹の上端に固定されているものは,「上駒 (かみごま) 」という。楽琵琶,一弦琴など「乗弦」「承弦」と称する。胴に皮を張るものでは駒の機能は効果的で,たとえば三味線では音楽の種目に応じて異なる駒を使用し,駒の重さによって音色が変えられる。駒の種類によって「平駒」「鉛駒」「台広」「忍び駒」などの名もある。なお,ツィター属の箏などにおける弦の中間に立てて移動させうるものは「 (じ) 」といって区別している。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「駒」の解説

こま【駒】

宮崎の麦焼酎。酒名は、国の天然記念物で日本在来馬の御崎(みさき)馬にちなみ命名。霧島山系の伏流水と白麹を用いて仕込む。蒸留法は減圧蒸留。原料は大麦、大麦麹。アルコール度数25%。蔵元の「柳田酒造」は明治35年(1902)創業。所在地は都城市早鈴町。

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デジタル大辞泉プラス 「駒」の解説

宮崎県、柳田酒造合名会社が製造する麦焼酎。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「駒」の解説

駒 (コマ)

動物。ウマ科の哺乳動物。ウマの別称

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