馬場文耕(読み)ばばぶんこう

精選版 日本国語大辞典 「馬場文耕」の意味・読み・例文・類語

ばば‐ぶんこう【馬場文耕】

江戸中期の講釈師。馬文耕ともいう。本姓中井通称左馬次。伊予(愛媛県)の人。宝暦四年(一七五四)頃から江戸で講釈師として活躍し、罵詈讒謗(ばりざんぼう)弁説で人気を得た。同八年、当時審理中の御家騒動題材とした「珍説もりの雫」が幕府忌諱に触れ、見せしめ獄門の刑に処せられた。著に「近世江都著聞集」「当世武野俗談」など。享保三~宝暦八年(一七一八‐五八

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デジタル大辞泉 「馬場文耕」の意味・読み・例文・類語

ばば‐ぶんこう〔‐ブンカウ〕【馬場文耕】

[1718~1759]江戸中期の講釈師・戯作者伊予の人。本名、中井文右衛門。通称、左馬次さまじ時事を論じて幕府の忌諱ききに触れ、獄死。著「近世江都著聞集」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「馬場文耕」の意味・わかりやすい解説

馬場文耕 (ばばぶんこう)
生没年:1718-58(享保3-宝暦8)

江戸中期の江戸の講釈師。《只誠埃録(しせいあいろく)》によると,本姓は中井,伊予の人,出家したものの還俗,中井文右衛門,さらには文耕と名のり易で生計を立てたとある。自著によると,幕臣致仕俳諧を白兎園宗瑞に学び,子供は寛永寺に奉公などとあるが《只誠埃録》と合致しない。著作には無署名,別号,仮託のものなどがあり,確定に困難な場合もあるが,《世間御旗本容気(かたぎ)》(1754),《近世江都著聞集》(1757),《当世諸家百人一首》(1758)など十数部が知られている。1758年(宝暦8)9月16日,日本橋榑正町文蔵宅で,当時審理中の〈金森騒動〉を講じていたところを逮捕され,12月29日(25日とも)小塚原で獄門に処せられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「馬場文耕」の意味・わかりやすい解説

馬場文耕
ばばぶんこう
(1718―1758)

江戸中期の講釈師。伝未詳。関根只誠(しせい)編の『只誠埃録(あいろく)』によると、伊予(愛媛県)の人、中井左馬次(さまじ)、一度出家ののち還俗(げんぞく)して文右衛門(ぶんえもん)、さらに馬場文耕と改め、当初易で生計をたてたというが、文耕自身の書き残したものからは裏づけえない。下級の幕臣であったが浪人して講釈師となり、俳諧(はいかい)は白兎園宗瑞(はくとえんそうずい)門、2人の子供を寛永寺(かんえいじ)に奉公させていたというのが実像であろうか。武家に出入りし家政を批判する一方、江戸・采女ヶ原(うねめがはら)などで講じ、毒舌家で、世話物の分野を開拓した。1758年(宝暦8)9月16日、美濃(みの)郡上(ぐじょう)の百姓一揆(いっき)を講じたうえ、小冊子『平仮名森の雫(しずく)』をも頒布したため逮捕され、12月25日小塚原(こづかっぱら)で獄門。『当世武野俗談(とうせいぶやぞくだん)』『近世江都著聞集』『当世諸家百人一首』など十数部の著述があるが、8代将軍吉宗(よしむね)への尊崇の念が甚だしい。

[延広真治]

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朝日日本歴史人物事典 「馬場文耕」の解説

馬場文耕

没年:宝暦8.12.25(1759.1.23)
生年:享保3(1718)
江戸中期の講釈師。本姓中井,通称を左馬次といった。伊予(愛媛県)の人。江戸に出て名を文右衛門と改め,文耕と号して,初めは易術で生計を立てたという。諸家に出入りする座敷講釈のかたわら,8代将軍徳川吉宗賛美のエピソードや時事問題を題材とした実録小説を書き,貸し本屋に売って暮らしを立てた。性闊達で豊かな学識を持っていたが,世に入れられぬ不満から,講釈中にも9代将軍徳川家重の治世や世事を誹謗すること多く,宝暦8(1758)年9月,当時御家騒動で有名だった美濃(岐阜県)郡上八幡城主金森頼錦の収賄事件を『珍説もりの雫』と題して話のなかに取り込み,さらに小冊『平かな森の雫』を公刊して捕らえられ,幕政を批判した科で打ち首,獄門となった。『近世江戸著聞集』『当世武野俗談』『大和怪談』などの著がある。閲歴には不詳な点が多いが,吉宗に仕えた下級の幕臣であったといい,忌日は29日,享年は44歳ともいう。

(宇田敏彦)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「馬場文耕」の解説

馬場文耕 ばば-ぶんこう

1715/18-1759* 江戸時代中期の講釈師。
正徳(しょうとく)5/享保(きょうほう)3年生まれ。幕政を批判,風刺した講釈をしていたが,美濃(みの)(岐阜県)八幡(はちまん)藩の金森騒動を題材にした「森の雫(しずく)」を発表して逮捕され,宝暦8年12月25日(一説に29日)処刑された。41/44歳。伊予(いよ)(愛媛県)出身。姓は中井。通称は文右衛門,左馬次,馬文耕。著作に「近世江戸著聞集」など。

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