餞別(読み)せんべつ

精選版 日本国語大辞典 「餞別」の意味・読み・例文・類語

せん‐べつ【餞別】

〘名〙
① 遠く旅立つ人や、転居などをする人を送別すること。特に、その人の無事を祈って酒食をともにして送りだすこと。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
古今著聞集(1254)四「学士実政朝臣任国におもむきけるに、餞別のなごりををしませ給て」 〔韋応物‐送宣州周録事詩〕
② 遠く旅立つ人や転居などをする人に、別れのしるしとして詩歌金品などをおくること。また、そのおくりもの。はなむけ
吾妻鏡‐元暦元年(1184)六月一日「是近日可皈洛之間、為餞別也」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)武隈の松「『武隈の松みせ申せ遅桜』と、挙白と云ものの餞別したりければ」

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デジタル大辞泉 「餞別」の意味・読み・例文・類語

せん‐べつ【×餞別】

遠方に旅行する人や転居・転任などをする人に、別れのしるしとして金品を贈ること。また、その贈り物。はなむけ。「餞別を贈る」
[類語]はなむけ

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普及版 字通 「餞別」の読み・字形・画数・意味

【餞別】せんべつ

餞行。〔梁書、王珍国伝〕永初め桂陽り、~なり。任を罷(や)めてり、路、江州を經(ふ)。刺柳世に臨みて餞別す。珍國の裝の輕素なるを見て、乃ちじて曰く、此れ眞に良二千石と謂ふべきなりと。

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改訂新版 世界大百科事典 「餞別」の意味・わかりやすい解説

餞別 (せんべつ)

旅行,転居,転任など長期の離別に当たり,別れの印として贈る金品。〈はなむけ〉ともいう。かつての旅は道中にさまざまな苦難を伴うものであったことから,餞別は単なる別れの印あるいは金銭援助として贈られるだけでなく,大勢の者の合力によって旅の安全を願う意味も込められていた。沖縄宮古島では餞別に姉妹は兄弟に対して櫛などの装身具を贈って無事帰還を願った。一般に旅の餞別には旅先のみやげ物を返礼とする。
贈物 →土産
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「餞別」の意味・わかりやすい解説

餞別
せんべつ

旅立つ人に「はなむけ」として贈る金銭や品物のこと、または贈ること。贈答の習わしの一つである。昔、旅に出る人の馬の鼻を行く方向へ向けて見送ってやったことから、「うまのはなむけ」が餞別の意となり、それが「贈り物」に転用されたといわれている。餞別はかさばる品物より、現金のほうが喜ばれる例が多いが、受けた側は旅から帰ったときにおみやげを贈るのが普通である。その場合、受けた金額の半分以上のものにするのが一般的とされている。会社の転勤などの餞別は金銭が通例。のし袋は紅白の水引で、蝶(ちょう)結びのものを用いる。外地へ転任する人には、早めに届けたい。退職・転職などの場合は心温まる手紙を添えるとよい。

[石川朝子]

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