養老(読み)ようろう

精選版 日本国語大辞典 「養老」の意味・読み・例文・類語

よう‐ろう ヤウラウ【養老】

[1] 〘名〙
① 老人をいたわり養うこと。老人を敬い大切にすること。また、老後を安楽に送ること。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉六「養老の資として、存貯せる一千クラウン〈略〉を、その故郷の親家に遺し与たへ」 〔周礼‐地官・大司徒
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「小弁慶の糸織の袷衣(あはせ)と養老の浴衣(ゆかた)とを重ねた奴を素肌に着て」
[2]
[一] 謡曲。脇能物。各流。世阿彌作。雄略天皇の御代、美濃国(岐阜県)本巣郡に霊水がわき出たというので、勅使がその養老の滝を訪れ、そこにやってきた親子に養老の名のいわれを尋ねる。老人は、息子がこの水を飲んだところ、疲れがとれたので家に持ち帰って父母にも飲ませ、老いの養いとしたといういわれを語り、霊水の所在を教える。勅使が喜んで帰ろうとすると山神が現われ、泰平の世を祝い舞を舞う。
[二] 奈良時代元正天皇の代の年号。霊亀三年(七一七)一一月一七日に改元、養老八年(七二四)二月四日に次の神亀となる。四年、「日本書紀」成る。→養老の滝
[三] 岐阜県の南西端の郡名。牧田川の流域にある。明治三〇年(一八九七多芸(たき)郡と上石津郡が合併して成立

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デジタル大辞泉 「養老」の意味・読み・例文・類語

ようろう【養老】[謡曲]

謡曲。脇能物世阿弥作。雄略天皇の御代に勅使が美濃の養老の滝へ行くと、霊泉に奇瑞きずいが現れ、山神が舞をまって祝福する。

ようろう【養老】[年号]

奈良時代、元正天皇の時の年号。717年11月17日~724年2月4日。

よう‐ろう〔ヤウラウ〕【養老】

老人をいたわり世話すること。また、老後を安楽に送ること。

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改訂新版 世界大百科事典 「養老」の意味・わかりやすい解説

養老 (ようろう)

能の曲名。脇能物。神物。世阿弥作。前ジテは孝子(ツレ)の老父。後ジテは養老の山神。美濃の養老ノ滝の付近に薬の泉がわき出たというので,その検分に勅使(ワキ)が遣わされる。勅使は,泉を発見した若者(ツレ)とその老父(前ジテ)に出会う。若者は親孝行な男で,薪を取っては父母を養っていたが,ある日ふと飲んだ泉の水があまりにさわやかだったので,汲んで帰って父親にすすめたところ,老人は見違えるように元気になった。そのことから滝にも養老の名がついたのだという。老人は事の由をこう説明して,薬の水を汲み,勅使にも捧げて立ち去った(〈上歌(あげうた)・下歌(さげうた)・ロンギ〉)。そのうちに空から音楽が聞こえると,山神(後ジテ)が現れて,御代のめでたさを祝福し,壮快な舞を舞う(〈神舞・ノリ地〉)。この曲は脇能の代表である神舞物の一つだが,前ジテが現実の老人で,後ジテの神霊とは別人格である点が変わっている。クセがないなど,構成も《高砂》等に比べて変則的である。
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養老[町] (ようろう)

岐阜県南西部,養老郡の町。人口3万1332(2010)。揖斐(いび)川中流西岸に位置し,西部は養老山地,東部は揖斐川と支流牧田川の扇状地および多芸(たぎ)輪中の低湿地からなる。養老という地名は《続日本紀》にみえる多度山の美泉(養老ノ滝)のことによる。牧田川に臨む船附,栗笠,烏江は濃州三湊といわれ,近世初期以来河港として栄えた。古くから農業が盛んであったが,水害には悩まされ続けた。1959年の伊勢湾台風で大きな被害を受けたのを機に,農業構造改善事業が進められた結果,水稲単作から養鶏や果樹栽培,園芸などを加えた多角的農業へと一新された。西部の山地は揖斐関ヶ原養老国定公園に含まれ,孝子伝説で名高い養老ノ滝を中心に養老神社や養老寺を配した県立養老公園となっている。養老鉄道線が通る。
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日本の元号がわかる事典 「養老」の解説

ようろう【養老】

日本の元号(年号)。奈良時代の717年から724年まで、元正(げんしょう)天皇の代の元号。前元号は霊亀(れいき)。次元号は神亀(じんき)。717年(霊亀3)11月17日改元。元正天皇が美濃国に行幸した際、「養老の滝」醴を瑞祥として改元が行われた(祥瑞改元)。この時、元正天皇は「醴泉(れいせん)は、美泉なり。もって老を養うべし。蓋(けだ)し水の精なればなり。天下に大赦(たいしゃ)して、霊亀三年を改め養老元年と成すべし」との詔(みことのり)を発した。『礼記(らいき)』を出典とする命名。718年(養老2)に藤原不比等(ふひと)らが「養老律令(りつりょう)」を編纂、720年(養老4)には『日本書紀』が完成した。また、この時期にはさかんに開墾が奨励・推進され、723年(養老7)には三世一身(さんぜいっしん)の法が施行されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「養老」の意味・わかりやすい解説

養老
ようろう

能の曲目。初番目、脇能(わきのう)物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)作。美濃(みの)の養老の滝のあたりに霊水が湧(わ)き出たという情報に、検分のため勅使(ワキ、ワキツレ)が派遣される。老人(前シテ)と息子(ツレ)が登場し、孝行の徳か、その薬の水を発見、父親が若返ったことを物語り、水をくんで勅使にも捧(ささ)げて立ち去る。そのうちに天から光輝き音楽聞こえ、花降り下る奇跡のなかに養老の山神(さんじん)(後シテ)が現れ、不老長寿の泉の奇瑞(きずい)と、泰平の御代(みよ)のめでたさを舞う。前シテを現実の老人としたのは脇能物として破格の構成で、本来は親子が中入せず、勅使とともにいるところに、別の役者が山神として現れて祝福を舞ったものであろう。

増田正造

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普及版 字通 「養老」の読み・字形・画数・意味

【養老】ようろう(やうらう)

老人に奉養する。〔淮南子、説林訓〕柳下惠、を見て曰く、以て老をふべしと。盜跖(たうせき)、を見て曰く、以て牡(ぼ)を黏(つ)く(鍵を開ける)べしと。物を見ること同じきも、之れを用ふることは異なり。

字通「養」の項目を見る

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「養老」の解説

ようろう【養老】

山梨の日本酒。大吟醸酒、純米酒、本醸造酒がある。原料米は美山錦など。仕込み水は笛吹川の伏流水。蔵元の「養老酒造」は慶応元年(1865)創業。所在地は山梨市北。

ようろう【養老】

愛媛の日本酒。原料米は松山三井など。仕込み水は肱(ひじ)川の伏流水。蔵元の「養老酒造」は大正10年(1921)創業。所在地は大洲市肱川町山鳥坂。

ようろう【養老】

山口の日本酒。蔵元の「笹川酒造場」は明治40年(1907)創業。現在は廃業。蔵は柳井市大畠にあった。

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