飯綱使い(読み)イヅナツカイ

デジタル大辞泉 「飯綱使い」の意味・読み・例文・類語

いづな‐つかい〔‐つかひ〕【飯綱使い】

古くから起こり、中世以後に流行した妖術。また、それを使う人。信州飯綱いいづな神社起源をもつともいわれ、荼枳尼天だきにてん祭り管狐くだぎつねを使って魔術を行ったという。
手品師

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改訂新版 世界大百科事典 「飯綱使い」の意味・わかりやすい解説

飯綱使い (いづなつかい)

飯縄使いとも書く。イヅナ(エヅナ)と呼ばれる霊的な小動物を駆使して託宣や占いなどさまざまな法術を行う東日本で活動した民間の宗教者。飯綱使いの法術を〈飯綱の法〉といい,近世では邪術の類とみなされていた。飯綱使いの多くは,修験系の男の宗教者であったが,いたこなどの巫女もこれを用いることがあったらしい。イヅナの語は明らかでないが,信州の飯縄(綱)(いいづな)山はこれと関係があるのではないかと考えられている。高知県香美市の旧物部村の陰陽道系の宗教者の間に〈ユヅナの法〉と呼ぶ延命の法が伝えられていることから推測すると,イヅナとは〈命綱〉のことであったかもしれない。近世の文献民間伝承の多くはイヅナの正体をキツネの霊としており,また,イヅナとクダとを同一視するところもある。イヅナを飼い養っていると富を得ることができるが,それを失うと宗教者の呪力も失われてしまうという。また,他人にこれを憑(つ)けて,病気や死に至らせることもできたので,一種のつきものでもあったが,非宗教者の家々で飼われて家筋を形成することはほとんどなかったようである。
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