飯沢匡(読み)イイザワタダス

デジタル大辞泉 「飯沢匡」の意味・読み・例文・類語

いいざわ‐ただす〔いひざは‐〕【飯沢匡】

[1909~1994]劇作家和歌山の生まれ。文化学院卒。本名、伊沢ただす社会風刺した喜劇活躍作品に「もう一人のヒト」など。「二号」で岸田演劇賞、「五人のモヨノ」で読売文学賞、「夜の笑い」で毎日芸術賞受賞

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「飯沢匡」の意味・わかりやすい解説

飯沢匡
いいざわただす
(1909―1994)

劇作家、演出家、小説家。本名伊沢紀(いざわただす)。政治家伊沢多喜男を父に、その赴任先の和歌山市に生まれる。文化学院在学中から劇団テアトル・コメディに属して劇作を始め、卒業後朝日新聞社に勤務のかたわら『北京(ペキン)の幽霊』(1943)、『鳥獣合戦』(1944)などの時局風刺劇を発表した。第二次世界大戦後『崑崙(こんろん)山の人々』(1950)で本格的な喜劇作家の地位を確立、1954年(昭和29)朝日退社後は縦横の活躍を示し、ラジオ児童番組『ヤン坊ニン坊トン坊』(1954~1956)をはじめ、『二号』(1954)、『塔』(1960)、『五人のモヨノ』(1967)、『円空遁走(とんそう)曲』(1973)などの話題作を発表。その活躍は新劇、ミュージカルから狂言、歌舞伎(かぶき)、新派、大衆劇の分野にまで及び、作品は時事性と反骨精神に富んでいた。短編小説、評論の名手としても知られた。日本芸術院会員。

[大島 勉]

『『飯沢匡ラジオ・ドラマ選集』(1951・宝文館)』『『飯沢匡喜劇集』全6巻(1969~1970・未来社)』『『飯沢匡が語る「狂言物語」』『飯沢匡新狂言集』(1984・平凡社)』『飯沢匡著『コメディの復讐』(1986・青土社)』『飯沢匡著『権力と笑のはざ間で』(1987・青土社)』『『飯沢匡喜劇全集』全6巻(1992~1993・未来社)』『飯沢匡著『武器としての笑い』(岩波新書)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「飯沢匡」の意味・わかりやすい解説

飯沢匡
いいざわただす

[生]1909.7.23. 和歌山
[没]1994.10.9. 東京
劇作家,小説家。本名伊沢紀 (ただす) 。文化学院美術科卒業。 1933~54年朝日新聞社勤務。一貫して風刺性の強い喜劇を書き,文学座で上演された『北京の幽霊』 (1943) では,日中戦争への批判をこめた。『二号』 (54) で第1回岸田演劇賞 (現岸田国士戯曲賞) 受賞。代表作は読売文学賞受賞の『五人のモヨノ』 (67) ほか,『もう一人のヒト』 (70) ,『夜の笑い』 (78) など。 83年日本芸術院会員。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「飯沢匡」の解説

飯沢匡 いいざわ-ただす

1909-1994 昭和-平成時代の劇作家。
明治42年7月23日生まれ。伊沢多喜男の次男。朝日新聞社にはいり,「アサヒグラフ」編集長をつとめる。昭和29年退社し,「二号」(29年第1回岸田演劇賞),「五人のモヨノ」(43年読売文学賞),「夜の笑い」(54年毎日芸術賞)など風刺のきいた喜劇を発表。「ヤン坊ニン坊トン坊」などの放送劇でも活躍。58年芸術院会員。平成6年10月9日死去。85歳。和歌山県出身。文化学院卒。本名は伊沢紀(ただす)。

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世界大百科事典(旧版)内の飯沢匡の言及

【喜劇】より

…戦前の新劇では,喜劇に重点をおいたのは金杉惇郎・長岡輝子夫妻を中心にしたテアトル・コメディ(1931結成,36解散)の活動ぐらいであった。現在,自他ともに喜劇作家として認めている飯沢匡(いいざわただす)(1909‐94)のような喜劇作家もここから出ている。 戦後には事情は大分変わってきた。…

【新劇】より

…川口一郎(1900‐71),田中千禾夫(ちかお)(1905‐95),小山祐士(ゆうし)(1906‐82),内村直也(1909‐89),森本薫ら,市民生活の哀歓を心理的せりふの躍動で描く劇作家たちの出現である。また同じころ(1931‐36),金杉惇郎・長岡輝子夫妻の主宰する〈テアトル・コメディ〉もフランス近代心理劇を上演し,飯沢匡(1909‐94)らの劇作家を生みだした。 築地座は1936年2月に解散にいたるが,それが母体となって翌37年9月,〈文学座〉が結成される。…

※「飯沢匡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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