食道損傷(読み)しょくどうそんしょう(英語表記)Esophageal injury

六訂版 家庭医学大全科 「食道損傷」の解説

食道損傷
しょくどうそんしょう
Esophageal injury
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 食道内や体外からの刃物などによる機械的損傷(食道壁に傷ができること)や、薬などによる化学的損傷、食道内圧の上昇などにより、食道壁の一部または全体に傷ができることをいいます。

 大部分の食道は後縦隔(こうじゅうかく)脊椎(せきつい)の前)にあるため、外部からの機械的損傷は少なく、飲み込んだ異物や薬物により損傷する場合が多くみられます。病院で胃のカテーテルや内視鏡治療の際に損傷が起こる医原性のものもあります。また、嘔吐などで急に食道内圧が上昇すると、食道壁に傷または(あな)があく場合があります(食道破裂(しょくどうはれつ)図9)。

症状の現れ方

 食事時の痛み、胸痛吐血頸部(けいぶ)のはれ、発熱などが現れます、ひどい時には、呼吸困難、ショック状態となります。

検査と診断

 一般の血液検査白血球、赤沈、CRP)により全身への炎症程度をみます。胸部X線検査では、炎症が後縦隔、胸部へ波及しているかどうかをみます。水溶性造影剤(ガストログラフィン)による食道造影、内視鏡検査により食道の損傷部位、程度を観察します。また、CT検査で後縦隔内の炎症の波及領域を調べます。

治療の方法

 食道の損傷の程度や炎症が、どのくらい食道壁を越えて波及したかにより、内服治療や絶食などの内科的治療で治るか、手術などの外科的治療が必要かを決めます。

 食道損傷は、状態によっては生命危険性もあるため、損傷の疑いがある場合は、もよりの救急病院へ受診してください。

村田 洋子


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「食道損傷」の解説

しょくどうそんしょう【食道損傷 Esophageal Injury】

[検査と診断]
 胸部X線撮影を行なうと、縦隔(じゅうかく)に空気がたまる縦隔気腫(じゅうかくきしゅ)(「縦隔気腫/縦隔血腫」)、縦隔の拡大、胸水(きょうすい)の貯留などが写ることからほぼ診断できますが、確定診断には、造影剤を使ったCT検査、内視鏡検査などが必要です。
[治療]
 開胸して、損傷部位を縫合(ほうごう)し、胸腔(きょうくう)ドレナージ(胸腔に管を挿入しておいて、胸腔にたまる空気や胸水を排出させる)を行ないます。

しょくどうそんしょう【食道損傷 Esophageal Injury】

 食道の中のけがで、機械的食道損傷、特発性(とくはつせい)食道破裂、マロリー・ワイス症候群の3つが代表的なものです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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