食用色素(読み)ショクヨウシキソ(英語表記)food dye

デジタル大辞泉 「食用色素」の意味・読み・例文・類語

しょくよう‐しきそ【食用色素】

飲食物の着色に用いる色素。クチナシ・ウコンなどからとる天然色素と、タール系の合成着色料とがある。

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精選版 日本国語大辞典 「食用色素」の意味・読み・例文・類語

しょくよう‐しきそ【食用色素】

〘名〙 食料品を着色するのに用いる色素。古くは、アイ、アカネ、シソなどの植物性のものを用いたが、現在では、主としてタール系合成色素を用いている。食品衛生法によってその品種、純度、使用法について厳密な制限がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「食用色素」の意味・わかりやすい解説

食用色素 (しょくようしきそ)
food dye

食品に色をつけるために用いられる色素。タール系色素のように化学的に合成された人工着色料と天然色素に分けられる。食品の見た目の美しさは,食欲に大きく影響する。また,昔は食品加工技術がまずく,加工処理により色が悪くなることが多かった。そこで,食品を着色することが古くから行われている。しかし,食品産業において最初に使われた硫酸バリウム硫化カドミウム酸化スズなどの無機質顔料はいずれも有害な金属を含んでおり,相次いで禁止処置がとられた。日本でも1900年に有害性着色料取締規則が公布され,禁止となった。第1次世界大戦前になると,ドイツで石炭を原料として各種の色素が合成され,食品の着色にも利用されるようになった。これらはコールタールを原料とすることから,タール系色素と呼ばれる。その色彩の鮮やかさと色伸びのよさから,広く使われるようになった。しかし,タール系色素は化学構造的にはアゾ色素キサンテン色素などであり,これらの構造をもつ化合物は毒性をもつことが多い。そこで,タール系色素については動物を用いた試験が実施され,毒性の認められたものは使用禁止処置がとられている。日本でも最大時には20数種が使われていたが,1997年現在11種となっている(表)。しかし,国により食生活が異なるのでタール系色素の許可状況は異なり,加工食品を輸出入するときは注意が必要である。さらに,日本では人工着色料を使用した場合は,その旨を食品の外装に表示する義務があり,それを避けるために天然物から抽出した色素が広く使われるようになった。1982年では33種の天然色素が使用されている。

日本で許可されているタール系色素はアゾ色素に属する赤色2号,赤色40号,赤色102号,黄色4号,黄色5号,キサンテン色素に属する赤色3号,赤色104号,赤色105号,赤色106号,トリフェニルメタン色素に属する青色1号,緑色3号,インジゴイド色素に属する青色2号である。いずれも水によく溶ける。油脂性食品に用いるときは,プロピレングリコールに溶解する。また,色素をアルミニウム塩としたアルミニウムレーキは水に不溶となるが,もとの色素より日光や熱に対し安定性が増すので,粉末食品や食品包装材の着色に用いられる。

植物の花の色がひじょうに鮮やかであるように,天然にも色素は豊富に存在する。日本では天然物は使用の表示がいらないことから,現在,多くの天然色素が使われている。天然色素は,原料から植物性,動物性,微生物,鉱物性に分かれる。植物性のものには,ブドウ,カカオ,ベニノキ,クチナシ,ベリー類,コーリャン,トマトなどの果実に由来するもの,ハイビスカスベニバナなど花に由来するもの,アカネ,ウコン,ニンジンなど根に由来するもの,シソなど葉に由来するものがある。動物性のものには,ラック,コチニールがある。微生物に由来するものには,モナスクス,クロレラ,リボフラビンがある。鉱物性のものには,べんがら,カーボンブラック,油煙ススがある。このほか,糖を加熱して製造するカラメルも広く使われている。以下おもなものについて述べる。

 (1)アナトー ベニノキの種子からとれる赤色色素の通称名。本体はノルビキシンnorbixinである。古くからチーズの着色に使われている。最近はウィンナーソーセージによく用いられる。(2)ウコン ショウガ科の植物の根に含まれる黄色色素の通称名で,本体はターメリックturmericである。カレー粉,たくあん漬の着色に用いられている。(3)コチニール 砂漠のサボテンに着生するコチニールカイガラムシの体内に蓄積している赤色色素の通称名で,本体はカルミン酸である。赤色のタール系色素の代替として用いられる。(4)モナスクス 紅こうじ菌の生産する赤色色素の通称名で,紅酒の製造に用いられる。最近は,大量培養法で生産している。耐熱性,染色性がよいので,ハム,水産練製品などに広く使われている。

 なお,日本では天然着色料を用いて,生鮮食料品を着色することは,消費者をまどわすものとして禁止されている。このほかに,酸化鉄(Ⅲ)(べんがら),天然色素のβ-カロチンと水溶性アナトー,葉緑素を加工した鉄および銅クロロフィリンナトリウムなどが食品着色料として許可されている。ただし,べんがらはバナナとこんにゃく,銅クロロフィリンナトリウムはチューインガム,コンブなど特定の食品についてのみ使用が許可される。
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百科事典マイペディア 「食用色素」の意味・わかりやすい解説

食用色素【しょくようしきそ】

食品添加物の一つ。食品の着色に用いられる色素。天然色素と化学的に合成された色素とがあり,合成色素はタール系色素が使われている。しかしタール系色素は連用すると毒性があるので,各国とも法律でその種類や品質を規定。現在日本では食品衛生法で下記の12種が許可されている。食用赤色2号(アマランス),3号(エリスロシン),40号(アルラレッドAC),102号(ニューコクシン),104号(フロキシン),105号(ローズベンガル),106号(アシッドレッド),食用黄色4号(タートラジン),5号(サンセットイエローFCF),食用緑色3号(ファストグリーンFCF),食用青色1号(ブリリアントブルーFCF),2号(インジゴカルミン)。天然色素はベニノキの種子からとれる赤色色素のアナトーや,ショウガ科の植物の根に含まれる黄色色素のウコンをはじめ,数十種の色素が使用を認められている。
→関連項目色素染料

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「食用色素」の意味・わかりやすい解説

食用色素
しょくようしきそ
food dyes

食品の着色に利用される色素で、化学合成および天然色素が用いられている。

 化学合成色素には毒性をもつものもあり、規制の強化によりその品目は著しく削減された。一方、自然指向と相まって天然色素への関心が高まり、品質の向上および安定化技術の進歩がみられているが、合成色素に比べて安全・安定性に関するデータの蓄積が十分とはいえない点のほか、天然物であるがゆえに、産地や製法による成分組成や含量が異なること、複数の成分組成や色素含量の分析法が確立されていないものがあることなど、残されている問題点もある。

[飛田満彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「食用色素」の意味・わかりやすい解説

食用色素
しょくようしきそ

食品に着色することを主目的として用いられる食品添加物の一種。植物性天然色素 (紅花から採取した食紅など) ,動物性天然色素 (えんじ虫から採取した食紅など) など天然色素と人工色素がある。多くは化学的に合成された人工色素で,水に溶けやすい酸性染色料で,食品衛生法に定められた基準によって人体への無害が確認されているものが用いられる。人工色素,特にタール系色素の利用は中毒や発癌性の反応が生じることが懸念され,その使用は年々厳重に規制されているが,世界的にみると国によってその許可基準や規制状況はかなり相違がある。

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栄養・生化学辞典 「食用色素」の解説

食用色素

 食品を着色するために用いる色素.食品添加物.

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