飛島(山形県)(読み)とびしま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛島(山形県)」の意味・わかりやすい解説

飛島(山形県)
とびしま

山形県北西方、酒田(さかた)港の北西約40キロメートルの日本海上にある島。古くはトドの来る島から「とど島」ともよばれた。酒田市に属する。日本海沿岸の奥尻海嶺(おくしりかいれい)の主峰が海上に現れたもので、面積2.75平方キロメートル。南北約3キロメートル、周囲12キロメートル。新第三紀中新世の玄武岩質凝灰角礫(かくれき)岩からなる堆積(たいせき)岩を主とし、部分的に玄武岩、流紋岩、安山岩などの貫入がみられる。地形的には全般的に平坦(へいたん)で、海岸段丘が発達し、最高地点でも68メートルにすぎない。遠望すると海岸線を急崖(きゅうがい)で限られた台状を呈す。島の南西に火山岩からなる御積(おしゃく)島や烏帽子(えぼし)諸島がある。対馬海流(つしまかいりゅう)の影響で冬季も温暖で、タブの群落ムベモチノキなどの常緑広葉樹も多く、暖地性植物の北限地、またオノミチサンゴの最北生息地。縄文時代の土器人骨が出土した海食洞のテキ穴遺跡がある。近世には庄内(しょうない)藩に属し、漁業を生業としたが、勝浦、中村、法木(ほうき)の3集落間に激しい漁場争いもあった。また西廻航路(にしまわりこうろ)が盛んなころは西風に強い避難港、風待ち港、中継港として利用され、十数軒の問屋もあった。1914年(大正3)酒田―勝浦間に定期便が就航。1932年(昭和7)勝浦築港以後は港湾としての整備も進み、日本海のイカ、タラ漁など沿岸・沖合漁業の基地となっている。現在は離島振興法などによる発電設備やダム築堤による簡易水道も完成、民宿もできて5~10月にかけては磯(いそ)釣りなどの観光客でにぎわう。庄内浜および飛島の漁撈用具は国指定重要有形民俗文化財。ウミネコ繁殖地として国の天然記念物に指定。鳥海(ちょうかい)国定公園に属す。人口は1950年の1618人をピークに減少を続け、2009年(平成21)には272人となった。

中川 重]

『『鳥海山・飛島』(1972・山形県総合学術調査会)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android