風馬牛(読み)ふうばぎゅう

精選版 日本国語大辞典 「風馬牛」の意味・読み・例文・類語

ふう‐ばぎゅう ‥バギウ【風馬牛】

〘名〙
① (「風」は、さかりがついて雌雄が呼び合うの意。「春秋左伝‐僖公四年」の「君処北海、寡人処南海、唯是風馬牛不相及也、不虞君之渉吾地也」から) 互いに慕い合ってはるか遠方にまで逸走する牛馬の雌雄でさえも会うことのできないほど、両地が遠く離れていること。転じて、慕い合うもの同士が、双方土地が遠く隔たっていて会えないことのたとえ。
※随得集(1388頃)人間万事不如休「人間万事不休、交友多同風馬牛」
② (━する) 転じて、自分とは何の関係もないこと。互いに無関係なこと。また、そのような態度をとること。
蔭凉軒日録‐延徳三年(1491)一二月一四日「雖王老暖寒会、不亦風馬牛乎」 〔陸游‐春愁詩〕

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デジタル大辞泉 「風馬牛」の意味・読み・例文・類語

ふう‐ばぎゅう〔‐バギウ〕【風馬牛】

[名](スル)《「春秋左伝」僖公四年の「風馬牛あい及ばず」から。「風」は発情して雌雄が相手を求める意》
馬や牛の雌雄が、互いに慕い合っても会うことができないほど遠く隔たっていること。
互いに無関係であること。また、そういう態度をとること。
「冷然として古今帝王の権威を―し得るものは」〈漱石草枕
[類語]無関係局外無縁疎遠没交渉人事ひとごと他人事余所よそ別問題縁遠い薄い対岸の火事

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故事成語を知る辞典 「風馬牛」の解説

風馬牛

無関係なことのたとえ。また、無関心なことのたとえ。

[使用例] 夫の苦悶煩悶には全く風馬牛で、子供さえ満足に育てれば好いという自分の細君に対すると、どうしても孤独を叫ばざるを得なかった[田山花袋蒲団|1907]

[由来] 「春秋左氏伝こう四年」に出て来るエピソードから。紀元前六五六年、春秋時代の中国で、北の方にあるせいという国が、南の方にあるという国に攻め込もうとしたことがありました。このとき、楚の王は、斉へ使者を派遣して、こう言わせました。「あなたの国は北海にあり、私は南海におります。その関係は、『ふうする馬牛もあい及ばざるなり(いくら盛りがついていても、馬と牛とはお互いを求め合わないのと同じようなものです)』。どうして我が国まで攻めて来ようとなさるのですか」。しかし、説得甲斐もなく、斉は楚に戦いを仕掛けたので、楚はやむなく、斉が主宰する同盟に入ることになりました。ただし、「風する馬牛も相及ばざるなり」を、お互いに求め合う馬や牛でも近づけ合えないほど離れている、と解釈する説もあります。

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