風習喜劇(読み)ふうしゅうきげき(英語表記)comedy of manners

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風習喜劇」の意味・わかりやすい解説

風習喜劇
ふうしゅうきげき
comedy of manners

特定の社会風俗機知に富んだ会話で描いた喜劇。場面を上流社会に設定し,「客間喜劇」「高級喜劇」とも呼ばれる。モリエールの『人間嫌い』はこのジャンルに属する。イギリスでは王政復古期にフランスの影響を受けて盛んになり,G.エサリッジ,W.コングリーブらが登場した。風習喜劇の伝統はその後も R.シェリダン,O.ワイルド,S.モーム,N.カワードらによって受継がれ,今日にいたっている。

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世界大百科事典 第2版 「風習喜劇」の意味・わかりやすい解説

ふうしゅうきげき【風習喜劇 comedy of manners】

風俗喜劇ともいう。広義には風俗を描く喜劇全般を指すが,狭義にはイギリスの社交界の風俗を描いた知的で洗練された喜劇のことである。エリザベス朝ロンドンを舞台にしたベンジョンソンなどの喜劇にその根があるが,17世紀後半の王政復古期にフランス趣味に強く影響されて本格的に成立した。チャールズ2世宮廷を中心とする社交界の人物の男女関係を中心的主題とし,副次的主題として金銭をめぐる争いがからむ。対象とした観客もロンドンの社交界の人々が主であった。

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世界大百科事典内の風習喜劇の言及

【喜劇】より

…そこには社会風刺的な色彩も強まり,ボーマルシェの《フィガロの結婚》の批判性はフランス革命前の社会の雰囲気をよく伝えている。イギリスでは,一種の風俗劇である独特な〈風習喜劇comedy of manners〉が生まれ,W.ウィッチャリー,W.コングリーブ,R.B.シェリダンなどが出た。 歴史主義的な19世紀には,歴史喜劇も一時期流行したが,写実的で社会や時代を風刺した喜劇(H.vonクライストの《こわれ甕》,A.S.グリボエードフの《知恵の悲しみ》,N.ゴーゴリの《検察官》)が生まれた。…

【イギリス演劇】より

…95年にはまた分裂したが,全体としては寡占状態が続いた。観客は社交界の貴族や町の遊び人,彼らに群がる娼婦など,社会の一部の階層が主で,だしものも当時の世相を映した風習喜劇が中心だった。韻文を原則とするエリザベス朝劇と異なり,これらは散文で書かれていた。…

【イギリス文学】より

…フランス的新古典主義の趣味に合わせて,シェークスピアの《リア王》がハッピー・エンドに改作されたり,〈英雄悲劇〉が創作されたりした。しかしこの時代の気質に最もふさわしい形式,したがってこの時代の劇作家がイギリス演劇にもたらした最大の貢献は,〈風習喜劇〉であった。倫理的価値規準を喪失した一種の閉鎖空間のなかで,上流の男女が機知の限りを駆使して,姦通やだまし合いのゲームにふける,といった構造の喜劇である。…

【喜劇】より

…そこには社会風刺的な色彩も強まり,ボーマルシェの《フィガロの結婚》の批判性はフランス革命前の社会の雰囲気をよく伝えている。イギリスでは,一種の風俗劇である独特な〈風習喜劇comedy of manners〉が生まれ,W.ウィッチャリー,W.コングリーブ,R.B.シェリダンなどが出た。 歴史主義的な19世紀には,歴史喜劇も一時期流行したが,写実的で社会や時代を風刺した喜劇(H.vonクライストの《こわれ甕》,A.S.グリボエードフの《知恵の悲しみ》,N.ゴーゴリの《検察官》)が生まれた。…

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