類聚歌合(読み)るいじゅううたあわせ

改訂新版 世界大百科事典 「類聚歌合」の意味・わかりやすい解説

類聚歌合 (るいじゅううたあわせ)

平安朝歌合証本の最大の集成事業。20巻。かつて関白藤原頼通主宰し,源経信が監修した10巻本の《歌合》にならって,それをこえようとする意欲をもって堀河天皇の主宰,権大納言源雅実監修のもとに編集し始められたのが《和歌合抄》10巻であったが,1096年(永長1)ころから始まったこの事業は,1107年(嘉承2)天皇の死去によって中断した。しかし鳥羽天皇初年,天仁・天永(1108-13)のころには,その名を《古今歌合》と改めて編集事業が再開され,修正増補を加えて15,16巻の規模に増大していった。さらに雅実のおいに当たる内大臣藤原忠通が協力するに及んで,近来の純文学的な歌合をも数多く吸収し,ついに20巻の規模を持つ《類聚歌合》にまで発展した。収容する歌合の最下限は,現在知られる限り,1126年(大治1)の《摂政左大臣忠通家歌合》であるが,その後まもなく編集事業は停止され,草稿本のまま近衛家に伝襲された。内容は,巻一・二 内裏,巻三 上皇宮,巻四・五 后宮女院,巻六・七 内親王,巻八 斎宮斎院,巻九 女御・御息所,巻十 親王,巻十一・十二 大臣,巻十三 納言,巻十四 参議非参議,巻十五・十六 雲客,巻十七 士大夫,巻十八 僧房,巻十九・二十 雑と,歌合主催者の社会的階層によって分類され,総数200度にも及ぶ歌合の証本を集成した。現在知られる限りでも,完本断簡を併せて約150度のものが伝わり,近世以降,二条切,柏木切などの名によって古筆切として珍重されていた。前後30年にわたって書写が継続しただけに17種にも及ぶ異なる筆蹟が含まれ,同一人の筆蹟でも若年老後の変化を見せるものなど,文学史上のみならず書美術史上貴重な参考資料を提供している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「類聚歌合」の意味・わかりやすい解説

類聚歌合
るいじゅううたあわせ

歌合を主催者の身分別に類別集成したもの。『歌合類聚』ともいわれる。平安中・後期に二度にわたって編集され、それぞれ集成された巻数に従い「十巻本」「廿巻(にじっかん)本」といわれている。この両集成の現存する原本および転写本により、平安後期までの歌合は、ほぼ全貌(ぜんぼう)が確かめられる。『十巻本類聚歌合』は、9世紀末の『民部卿(みんぶのきょうの)(行平(ゆきひら))家(いえの)歌合』から1056年(天喜4)『皇后宮(きさいのみやの)(寛子)歌合』に至る46の歌合を10巻に類別編集する。編集は後冷泉(ごれいぜい)天皇の在世中(1068以前)といわれ、編集主体は関白藤原頼通(よりみち)、源経信(つねのぶ)らが関与したと思われる。『廿巻本類聚歌合』は、12世紀初め堀河(ほりかわ)天皇の意図に基づく『和歌合抄(わかあわせしょう)』10巻の編集に始まり、『古今歌合』に増補され、ほぼ1127年(大治2)に『類聚歌合』20巻として整備編集されたと推定できる。前記の『民部卿家歌合』から1126年『摂政(せっしょう)左大臣(忠通(ただみち))家歌合』に至る200以上の歌合を20巻に編集した。この編集主体者は『和歌合抄』以来太政(だいじょう)大臣源雅実(まさざね)と推定され、摂政藤原忠通も関係深く、実務には源俊頼(としより)らが参加したといわれる。

[橋本不美男]

『堀部正二著『類聚歌合とその研究』(1967・大学堂書店)』『萩谷朴・谷山茂校注『日本古典文学大系74 歌合集』(1965・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「類聚歌合」の意味・わかりやすい解説

類聚歌合
るいじゅうたあわせ

平安時代中期~後期に成った歌合の集成。 10巻本と 20巻本がある。 10巻本は藤原頼通が中心となって編。天喜4 (1056) 年~治暦4 (68) 年の間に成立。巻一~巻三は内裏,仙洞,巻四,巻五は皇后,皇太后など,身分別に 46歌合を類聚。これを受継ぎ,30年以上の年月と 20人近い執筆者を動員して行われたのが嘉保 (94~96) 頃より始った 20巻本である。3期にわたり,第1期として 10巻約 120の歌合を集めたらしいが,堀河天皇の崩御により中断。第2期には修正増補して 15~16巻になったと想定され,さらに第3期保安1 (1120) 年頃には同時代の歌合も収めることにより数がふえ,大治1 (26) 年頃には 20巻にいたった。結局,身分別に約 200の歌合を集めた大資料となり,10巻本と 20巻本を合せると現存歌合の祖本はほぼ完全に知られる。

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