精選版 日本国語大辞典 「願」の意味・読み・例文・類語
ねが・う ねがふ【願】
〘他ワ五(ハ四)〙 (動詞「ねぐ(請)」に反復・継続の助動詞「ふ」が付いてできたもの)
※万葉(8C後)二〇・四四七〇「泡沫(みつぼ)なす仮れる身そとは知れれどもなほし禰我比(ネガヒ)つ千歳の命を」
※古今(905‐914)仮名序「さざれいしにたとへ、つくば山にかけてきみをねがひ」
② 特に、極楽往生を求めて信心する。
※源氏(1001‐14頃)明石「のちの世にねがひ侍ところのありさまも思ふ給へやらるる夜のさまかな」
※山家集(12C後)中「露と消えば蓮台野にをおくりおけねがふ心を名にあらはさん」
③ 心の中で望ましい物事の実現や獲得を請い求める。のぞむ。ほしがる。希望する。
※万葉(8C後)五・九〇四「世の人の 貴(たふと)び慕(ねがふ) 七種(ななくさ)の 宝も我は 何せむに」
※霊異記(810‐824)下「遠く前の非を愧(は)ぢ、長に後の善を祈(ネカフ)」
④ 上位の者や役所などに処置をしてくれるよう希望を申し立てる。請願する。願い出る。訴え出る。
※浄瑠璃・大経師昔暦(1715)下「私は此度お願ひ申上げし御領内助作が従兄弟」
⑤ 他の人に助力や配慮などを求める。たのむ。「ご援助をねがう」「お静かにねがいます」など。
※二人女房(1891)〈尾崎紅葉〉上「『なあ、品行は?』〈略〉『其点は私にも解りかねます。一つ糺して見ませう』『何分願(ネガ)ひます』」
⑥ 商店で、品物を客に買ってもらう。
※彼女とゴミ箱(1931)〈一瀬直行〉絵を文字にかく「今日のところ、特別ほんのかき賃にもならない一円でもってねがっておきます」
ねがい ねがひ【願】
〘名〙 (動詞「ねがう(願)」の連用形の名詞化)
① 神仏に祈り願うこと。また、その事柄。願(がん)。祈願。
※源氏(1001‐14頃)総角「ただしばし、ねかひの所を隔たれるを思ふなん、いとくやしき」
② 極楽往生を求めること。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「尼寺に懸けこみ、願(ネガ)ひの道に入ぬ」
③ こうあってほしいと望み願うこと。また、その内容。希望。期待。
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「慕(ネカヒ)を懐きて遍く殊の方に歴(へ)」
④ 役所などに願い出ること。また、その願書。
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)上「武士の立身振り捨て、虚病を構へねがひをあげ」
ねがわし・い ねがはしい【願】
〘形口〙 ねがは
し 〘形シク〙 (動詞「ねがう(願)」の形容詞化) 望むところを乞い願う状態、ほしいと思う状態であるさま。また、心にかなうさま。のぞましい。

※山田本妙法蓮華経平安初期点(830頃)「世尊願楽(ネガハシク)して聞かまく欲はし」
※徒然草(1331頃)一「この世に生まれては、ねがはしかるべき事こそ多かめれ」
ねがわし‐さ
〘名〙
がん グヮン【願】
〘名〙 願うこと。特に、神仏に祈り、願うこと。また、その内容。願い。
※性霊集‐序(835頃)「天随二其願一果擢二求法一」
※源氏(1001‐14頃)須磨「多く立てつる願の力なるべし」 〔史記‐蔡沢伝〕
がん‐・ずる グヮン‥【願】
〘他サ変〙 ぐゎん・ず 〘他サ変〙 神仏に祈願する。心に願う。
※観智院本三宝絵(984)中「蘇我大臣又かくのごとく願じて軍をあつめてすすみたたかふに」
ねがわ
し ねがはし【願】
〘形シク〙 ⇒ねがわしい(願)
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