顕花植物(読み)けんかしょくぶつ(英語表記)Phanerogam

精選版 日本国語大辞典 「顕花植物」の意味・読み・例文・類語

けんか‐しょくぶつ ケンクヮ‥【顕花植物】

〘名〙 有性生殖方法として花を咲かせ種子を作る植物胚珠が裸出している裸子植物と、胚珠が子房の中に包まれている被子植物とがこれに属する。種子植物。⇔隠花植物
時事新報‐明治三〇年(1897)九月一七日「高等なる顕花植物即ち今日まで『いてふ』をも包括したる科門には」

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デジタル大辞泉 「顕花植物」の意味・読み・例文・類語

けんか‐しょくぶつ〔ケンクワ‐〕【顕花植物】

花を咲かせ、実を結び、種子によって繁殖する高等植物裸子植物被子植物を含む。種子植物。⇔隠花植物

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改訂新版 世界大百科事典 「顕花植物」の意味・わかりやすい解説

顕花植物 (けんかしょくぶつ)
Phanerogam

隠花植物の対語。花を咲かせる植物の総称で,裸子植物と被子植物を含む(ブロニャールA.Brongniart,1843)。有花植物はこれとほぼ同義語的に用いられることもあるが,元来は被子植物のみをさす。〈花〉を被子植物だけのものとして認識するか,裸子植物にまで広げて解釈するかによって範囲が変わるが,もともと顕花植物は裸子植物を含めていた。花を構成する萼,花弁おしべ,めしべの諸器官起源を探ると,すべて葉の変形したものと考えられる。この観点からは花は〈胞子葉茎頂に密生したもの〉と定義することができる。この定義によれば隠花植物に属するシダ植物中のトクサ類ヒカゲノカズラ類胞子囊穂(いわゆる穂)も一種の花とみなすことができ,そうなるとシダ植物の中にも花をもつものがあることになり,顕花・隠花植物の区別が厳密には不可能になる。このため顕花植物に代わり,種子をもつものということで,現在では種子植物の語が用いられるようになった。
隠花植物
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百科事典マイペディア 「顕花植物」の意味・わかりやすい解説

顕花植物【けんかしょくぶつ】

隠花植物の対語で種子植物ともいう。花をつけ種子を作る植物。裸子植物と被子植物の両者の総称で,植物の中で最も高等である。これらおよび隠花植物のシダ植物には維管束があり,根・茎・葉の三つの器官の分化がみられる。
→関連項目レイ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「顕花植物」の意味・わかりやすい解説

顕花植物
けんかしょくぶつ

花をつけ、種子を生じる植物の総称。フランスの植物学者ブロニャールA. T. Brongniart(1801―76)が被子植物と裸子植物を一つにまとめ、シダ植物などの隠花植物と区別した。しかし、シダ植物のヒカゲノカズラなどの胞子嚢穂(ほうしのうすい)を器官学的には花とみることもできるので、系統分類学上、被子植物と裸子植物をまとめるときは、花の有無でなく、種子の形成を基準に種子植物という語を用いるのが適当である。

[杉山明子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「顕花植物」の意味・わかりやすい解説

顕花植物
けんかしょくぶつ
flowering plants; Phanerogamae

花をつける植物の意。もともとは「花」をもたない隠花植物 flowerless plants; Cryptogamaeに対する語。分類学上の分類群として広く用いられてきたが,厳密にいうと,ヒカゲノカヅラ類,スギナ類などの胞子嚢穂も「花」と考えられるので,適当な言葉ではない。このため現在は種子の存在を基準とした種子植物 seed plants; Spermatophytaという語に置き換えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の顕花植物の言及

【維管束植物】より

…しばしば高等植物と呼ばれることがある。 かつて,植物界を花の有無によって顕花植物と隠花植物に二分する分類法があった(ブロニャールA.Brongniart,1843)。比較器官学の立場から花は〈茎頂に胞子葉が密生したもの〉と定義づけられるので,隠花植物に属するシダ植物の中にも一種の花を咲かせるものがあることになる(例,ヒカゲノカズラ,トクサ)。…

※「顕花植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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