顔面痛(読み)がんめんつう(英語表記)facial pain

改訂新版 世界大百科事典 「顔面痛」の意味・わかりやすい解説

顔面痛 (がんめんつう)
facial pain

顔面部に生ずる痛みは顔面神経痛と呼ばれることがあるが,顔面の感覚は主として三叉神経(さんさしんけい)によって伝えられ,顔面神経は運動性の神経であるから正しくは顔面痛と呼ぶべきである。顔面痛はいろいろの原因によって生じ,それによってその症状や治療もさまざまである。三叉神経痛trigeminal neuralgiaは,きわめて激しい顔面部の痛みが発作的に生ずるものであるが,原因は不明である。これに対し,三叉神経の神経炎や鼻咽腔腫瘍副鼻腔炎歯髄炎眼窩(がんか)内腫瘍などの顔面部の炎症や,腫瘍などによって,三叉神経の領域に持続的な痛みを生ずることがある。このような場合には,三叉神経痛と異なって,痛みを生じている部分の感覚は鈍くなっていることが多い。群発頭痛cluster headacheは,主として夜中に片側の眼のまわりに切り裂かれるような激しい痛みを生ずるもので,数十分から数時間続いて自然におさまり,後にはなにも残らないが,数週間から数ヵ月にわたって,同様の発作がくり返される。原因は不明であるが,偏頭痛一種と考えられ,麦角製剤が有効である。このほか視床延髄の血管障害や腫瘍,帯状疱疹などで顔面痛を起こすこともある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「顔面痛」の意味・わかりやすい解説

顔面痛
がんめんつう

顔面の神経痛様疼痛(とうつう)の総称で、俗に顔面神経痛ともいい、多くは三叉(さんさ)神経の支配領域におこり三叉神経痛とよばれるが、まれに顔面神経や迷走神経の支配領域におこることもある。三叉神経痛は三叉神経の支配領域に発作的におこる電撃様疼痛であり、原因不明のものを真性または本態性とよび、歯周疾患、歯髄疾患悪性腫瘍(しゅよう)、副鼻腔(ふくびくう)炎などによって生じるものを症候性とよぶ。真性のものは40歳以上の高齢者に多く、症状は片側性で、特定の部位を刺激すると激しい電撃様疼痛を生じる発痛帯が認められ、痛みの発作は30秒ないし数分間続く。痛みの発作が治まると、顔の表情はまったく元の状態に戻る。症候性のものには年齢の差はみられず、痛みが持続性のこともあり、刺激により痛みが発作的に増大する。真性のものの治療法は、鎮静剤、筋弛緩(しかん)剤などの投与、アルコール(エタノール注射による疼痛抑制(神経ブロック)、三叉神経の捻断(ねんだん)手術、半月神経節の部分切除などが行われる。しかし再発することが多く、最近では歯髄疾患や歯周疾患との関連が重要視されている。真性の三叉神経痛に対してガンマナイフによる治療が有効であることがわかってきている。症候性のものは、原因の除去によって全治するが、口腔内に新たな原因が生じると、痛みの再発をみることが多い。

[土谷尚之]

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