顔ばせ（読み）かんばせ

精選版 日本国語大辞典

かん‐ばせ【顔ばせ】

〘名〙 (「かおばせ（顔━）」の変化した語)

① かおつき。かお。容貌。

※文明本節用集（室町中）「飾_レ躬正_レ顔(カンバセ)以獲_二高官_一是謂_二盗端_一〔三略〕」

② 体面。名誉。

※太平記（１４Ｃ後）一四「我何の顔(カンハセ)有てか亡朝の臣として不義の逆臣に順はんや」

[語誌]→「かおばせ（顔━）」の語誌

かお‐ばせ かほ‥【顔ばせ】

〘名〙 (古くは「かおはせ」、「かおわせ」とも) 顔の様子。顔つき。顔色。かんばせ。〔十巻本和名抄（934頃）〕

※百座法談（1110）閏七月九日「桃李の顔(カホハセ)に怨を含(ふふみ)芙蓉の眼に涙を浮べて」

※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡（1712頃）中「命のうちに今一度かほばせ見たいあひたい」

[語誌]「はせ」は、「心ばせ」の「はせ」と同様、走らせる意の下二段動詞「はす（馳）」の名詞形。類義語に「顔つき」があるが、「顔つき」が多く和文に用いられるのに対して、「顔ばせ」は、漢文訓読体に多く用いられた。中世頃から「かんばせ」という形が見られるようになり、名誉・体面という特有の用法も生じた。

出典　精選版 日本国語大辞典

デジタル大辞泉

かお‐ばせ〔かほ‐〕【顔ばせ】

《古くは「かおはせ」「かおわせ」》顔つき。顔いろ。かんばせ。
「すみれ売りの―霧の如く」〈鴎外・うたかたの記〉

出典　小学館