題目立(読み)ダイモクタテ

デジタル大辞泉 「題目立」の意味・読み・例文・類語

だいもく‐たて【題目立】

奈良県奈良市上深川かみふかわ町の八柱やはしら神社に伝わる民俗芸能宮座入りした数え年17歳の若者中心に演じられる語り物。国の重要無形民俗文化財、またユネスコ無形文化遺産

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「題目立」の意味・わかりやすい解説

題目立
だいもくたて

民俗芸能。奈良市上深川(かみふかわ)町(旧、山辺(やまべ)郡都祁(つげ)村上深川)の八柱(やはしら)神社および奈良市丹生(にう)町の丹生神社など奈良地方で行われていた中世芸能。今日では上深川だけに残っており、八柱神社の10月12日の秋祭に行われる。『多聞院(たもんいん)日記』天正(てんしょう)4年(1576)の条に題目立と記してある。名称の由来は明らかでないが、『多聞院日記』には、経論(きょうろん)に節をつけて読むというようなことが書いてあるから、仏教でいう題目を唱えることと関連して名称がつけられたと思われる。現在、上深川では『巌島(いつくしま)』『大仏供養』『石橋山』の3曲を伝え、毎年、宮座入りをした17歳の男子を中心に演じられる。立烏帽子(たてえぼし)に素袍(すおう)上下で扇を首筋に斜めに挿し、弓を持ち、特設の舞台で舞う。『巌島』を例にとると、清盛(きよもり)は素袍上下で扇以外の持ち物はなく、神主は幣(へい)を持ち、ほんさんみ、経盛(つねもり)、こまつ、くらんど、さだいじんは弓を持ち、弁才天は顔におしろいをつけ、宝冠をかむり長刀を持つ。各役それぞれ座席を占め、語物を独特な節回しで謡う。曲のなかでフシヨ舞という所作が入る。これは、1人が中央に扇を手に持って出て舞い、他の者は片膝(ひざ)をつき、扇で拍子をとり、喜びの歌をうたうものである。他の地方にない特色ある民俗芸能で、1976年(昭和51)には国の重要無形民俗文化財に指定されている。

後藤 淑]

 また、2009年(平成21)ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。

[編集部]

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事典 日本の地域遺産 「題目立」の解説

題目立

(奈良県奈良市)
無形文化遺産」指定の地域遺産。
奈良県東北部の上深川の八柱(やはしら)神社の秋祭(10月12日)で、数え17歳の青年たちを中心に演じられる語り物芸。源平合戦を題材にした「厳島」「大仏供養」「石橋山」の三番が伝承されている。類例の少ない語り物の芸能であり、中世の芸能の姿をうかがわせる。重要無形民俗文化財(民俗芸能:語り物・祝福芸)

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

デジタル大辞泉プラス 「題目立」の解説

題目立

奈良県奈良市都祁に伝わる民俗芸能。八柱神社の秋祭で、祭祀組織である「宮座」に入ったばかりの数え17歳の若者たちを中心に演じられる語り物芸。独特の抑揚のある台詞劇で、語りの終わり近くになると「フショ舞」と呼ばれる舞が舞われる。1976年、国の重要無形民俗文化財に指定。2009年、ユネスコの無形文化遺産に登録。

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