頭蓋咽頭腫(読み)ずがいいんとうしゅ

六訂版 家庭医学大全科 「頭蓋咽頭腫」の解説

頭蓋咽頭腫
ずがいいんとうしゅ
Craniopharyngioma
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 胎生期より遺残した組織から発生する良性腫瘍(しゅよう)です。脳腫瘍全体の2~4%を占め、半数小児に、半数は成人に発生します。両眼の奥で下垂体の上に多く発生します。

症状の現れ方

 頭痛などの頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)症状に、視力視野障害など視神経の機能障害が加わることもあります。また下垂体の機能が障害されて、全身倦怠感(けんたいかん)月経不順、低身長、尿量が増加する尿崩症(にょうほうしょう)などのホルモンの異常が現れることがあります。小児や高齢者の場合は、ホルモンの異常に気づかれないことも多く、その発見が遅れる傾向にあります。

検査と診断

 MRIで腫瘍場所を診断します(図37)。その他、ホルモン異常に関する血液検査や、眼科での視力視野の検査が行われます。

治療の方法

 手術で腫瘍を取り去ることが基本です。腫瘍のまわりには、生命を維持するために大切なホルモンの中枢があるため、慎重な手術操作が求められます。また手術後は、一時的にホルモンの機能異常を合併するので、内分泌内科や小児科と協力した治療が行われます。手術中に重要な機能を有する場所から腫瘍をはがせず残った場合には、手術後に放射線治療が加えられることがあります。

松前 光紀


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内科学 第10版 「頭蓋咽頭腫」の解説

頭蓋咽頭腫(脳腫瘍各論)

(5)頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)
 Rathke囊(craniopharyngeal duct)の遺残上皮から発生したと考えられる上皮性の腫瘍で,全脳腫瘍の3.4%を占める.腫瘍はトルコ鞍上部から鞍内にかけて存在するが,10%程度の症例では鞍内に限局する.8割以上の腫瘍は囊胞を伴い,囊胞の内容液はモーターオイル様である.一般的には小児に発生する腫瘍であるが,成人症例も決してまれではない.
臨床症状
 視力・視野障害,下垂体前葉の機能低下症(小児例では下垂体性小人症が問題となる),体温低下や尿崩症などの視床下部症状をみる.視野障害に関しては,下垂体腺腫とは異なり左右非対称で不規則な欠損パターンを呈する傾向にある.術前から尿崩症を呈する症例は,約10%程度である.
診断
 頭蓋単純撮影上,トルコ鞍は皿状(saucer-like pattern)を呈する.頭蓋単純撮影,CTで鞍上部に散在する石灰化を認めるが,その発現率は小児例ほど高い.MRIでは鞍上部に囊胞を伴う腫瘍を認め,囊胞壁は著明に造影される(図15-14-5).一部の症例では,腫瘍は囊胞を伴わず充実性のこともある.
治療
 腫瘍全摘出により治癒が期待できるが,周囲組織との癒着が強く一部腫瘍を残さざるを得ない場合も少なくない.全摘出が達成されなかった症例では,術後に放射線治療を行うのが一般的である.[新井 一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「頭蓋咽頭腫」の意味・わかりやすい解説

頭蓋咽頭腫
とうがいいんとうしゅ
craniopharyngioma

胎生期の頭蓋咽頭管の遺残から発生する先天性腫瘍。小児に多いが,成人に生じることもまれではない。全頭蓋内腫瘍の3~6%,小児脳腫瘍の約 10%を占める。大半はトルコ鞍部に発生し,ホルモン異常,視力・視野異常を起し,大きくなると脳圧亢進症状が起る (→トルコ鞍部腫瘍 ) 。診断は頭部単純X線撮影,CTスキャン,脳血管撮影,気脳撮影などによる。治療は主として手術による。全摘出は困難なことが多いが,良性腫瘍なので,部分摘出でも予後はかなりよい。

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