出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
祭礼や神事の執行にあたって重要な役割を担う人、またはその家をいう。頭人という語も同じ内容で用いられてきた。それぞれ当屋、当人などとも書く。一般に1年交替の輪番制で責務を果たすので、当番あるいは年番(ねんばん)とよばれることも多い。神を迎え祭るためには潔斎といった精神的な行為と、神饌(しんせん)などの経済的な負担が要求される。前者は当日に近づくにつれてより厳重なものとなる。身を清浄に保つために沐浴(もくよく)の遂行や食物の制限、同衾(どうきん)の回避などを遵守するのだが、それを実行する期間は生業に従事することすら困難になる。頭屋制度は、こうした神事や行事に伴う負担の分散措置として生じたものである。頭(とう)は神事の主宰者を意味したようで、文献では平安時代なかばから何々の頭という名称がみられる。民間における一年神主とか頭屋神主といった呼び方は、頭屋の地位と1年交替の輪番制をよく示している。現在も盛んに行われている関西地方の頭屋祭りや、関東地方のオビシャ(御奉射)は頭屋神事の代表的なものである。頭屋は神籤(みくじ)や座衆帳、さらには戸口順によって選出され、頭渡しという一定の手続を経て引き継がれる。この新しい頭屋を中心にその年の神事が営まれるのである。室町時代に形成された宮座は頭仲間とも称するように、頭屋を独占する特権的な祭祀(さいし)集団であった。
なお、頭屋は神事の主宰者として神主の役割をも果たしていた。種子島(たねがしま)では頭屋を神主、専業の神職をホイドンと区別しており、神事に際してホイドンは神主の補助的な役割を果たしているにすぎない。しかし、多くの地域では神職の進出によって、頭屋は世話人という立場で神事の設営にあたるようになった。
[佐々木勝]
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