頬当(読み)ほおあて

精選版 日本国語大辞典 「頬当」の意味・読み・例文・類語

ほお‐あて ほほ‥【頬当】

〘名〙 武具小具足面具一つ。顎(あご)から両頬にかけて顔面下方を保護するもの。蝙蝠付(こうもりつけ)で下りを威しつけるのを例とする。
太平記(14C後)三八「ほうあてをして」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「頬当」の意味・わかりやすい解説

頬当
ほおあて

頬、顎(あご)および首を防護する甲冑(かっちゅう)の小具足。戦闘が熾烈(しれつ)な白兵戦的様相を呈するに至った南北朝時代ごろに、平安時代以来の額と両頬に当てる半首(はつむり)にかわって生じた。顔面の防護とともに、兜(かぶと)の緒を緊縛する用途を兼ねることから兜との併用を原則とする。主として鉄板を打ち出してつくり、これを鉄面(かなめん)と称し、練革(ねりかわ)製を練頬といい、首の防護として下部に小札(こざね)製や板札(いたざね)製の垂(たれ)(須賀(すが)ともいう)を設ける。形状によって顔面の下半部を覆う目の下頬当、これの鼻のない半頬当、さらに小形の燕(つばめ)頬当などのほか、越中(えっちゅう)頬当という顎だけに当てるもっとも小形のものも賞用された。通常、鼻は蝶番(ちょうつがい)や栓によってかけ外しうるようにつくる。頬当の表面は、漆塗りや金錆地(かなさびじ)にして、鑢目(やすりめ)をつけ、金銀象眼(ぞうがん)を施し、あるいは据文金物(すえもんかなもの)を打って装飾することがあり、鼻下や顎に髭(ひげ)を植え、歯を設けることも多く、江戸時代には耳がついた。緒便(おだより)として折釘(おれくぎ)や緒便金(がね)を打ち、顎の下には汗流しの穴を穿(うが)った。江戸時代の故実家により、各種の面相から烈勢面(れっせいめん)、隆武(りゅうぶ)面、姥(うば)面、鳶鼻(とびはな)などさまざまの呼称がつけられた。現存の頬当の大部分は江戸時代の作で、なかには顔面をすべて覆う総面(そうめん)と称するものもあるが、これは主として甲冑が威儀化した江戸中期以降のもので、とうてい軍陣の実用にたえるものではない。

[山岸素夫]

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