デジタル大辞泉
「領」の意味・読み・例文・類語
りょう〔リヤウ〕【領】
[名]
1 領有すること。また、領有する土地。領分。領地。「他国の領となる」「オランダ領」
2 律令制で、郡司の官職。長官が大領、次官が少領。
[接尾]助数詞。衣類・鎧など、一そろいの物を数えるのに用いる。「両」とも当てて書く。「鎧一領」「式服三領」
くだり【▽領/▽襲】
[接尾]助数詞。衣装や幕・蚊帳などを数えるのに用いる。そろい。
「宮の御装束一―かづけ奉り給ふ」〈源・若菜下〉
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りょう リャウ【領】
[1] 〘名〙
① 令制で郡司(ぐんじ)の官職名。長官を大領(たいりょう)、次官を少領(しょうりょう)といった。こおりのみやつこ。
※霊異記(810‐824)中「烏の鄙なる事を示(み)て、領、道心を発す」
② 領有する土地など。領有物。所領。領地。ろう。「水戸領」「仙台領」「イギリス領」「フランス領」など、藩や国の名の下に付けて、その国の領地、領土であることを表わすこともある。また、あるものが支配する範囲。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「うけ給はれば、このくら、せんじょの御りゃうなりけり」
[2] 〘接尾〙 (「領」は
衣服の襟
(えり)の意、あて字として「両」も用いられた) 装束・鎧
(よろい)などのひとそろいの数をかぞえるのに用いる。くだり。
※
書紀(720)欽明二三年八月「甲二領、金餝
(こかねつくり)の刀二口」
ろう‐・ず ラウ‥【領】
〘他サ変〙 (「ろう」は「りょう(領)」の
直音表記)
① 領地・
荘園・
家屋などを自分のものとして所有する。
※
蜻蛉(974頃)上「川の
あなたに、
按察の大納言のらうじ給ふ所ありける」
※
源氏(1001‐14頃)明石「良清がらうじていひしけしきもめざましう」
③ とりこにする。物の怪(け)などがとりついて離れない。
※源氏(1001‐14頃)
夢浮橋「猶このらうじたりける物の身にはなれぬ心地なんする」
りょう‐・する リャウ‥【領】
〘他サ変〙 りゃう・す 〘他サ変〙 (古くは「りょうずる」とも)
① 手に入れる。自分の所有とする。占有する。自己の所有として支配する。
※
落窪(10C後)二「世に生きたりとも、さばかりの家りゃうすばかりにはあらざらまし」
②
心霊・
魔物などが取りついて思うままにする。とりこにする。
※
今昔(1120頃か)一四「其の
毒蛇の為に被領て、我、其の夫と成れり」
③ 受け取る。領収する。また、了承する。
うし‐は・く【領】
〘他カ四〙 (うし(主)として領有するの意) おさめる。統治する。うすはく。
※
古事記(712)上「汝が宇志波祁
(ウシハケ)る葦原の中つ国は我が御子の知らす国ぞ」
うす‐は・く【領】
※延喜式(927)祝詞「吾が地と宇須波伎(ウスハキ)坐せと進る幣帛は」
ろう ラウ【領】
〘名〙 (「りょう(領)」の直音表記) 領地。りょう。
※栄花(1028‐92頃)岩蔭「殿おはしまして、南の院を奉らせ給ひて、別納をば三宮の御らうにとおぼしめしたり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
領 (りょう)
(1)近世における領主支配地の単位の呼称。御領,領分,領地,領域などと称されるが,大名の所領について尾州領,川越領,棚倉領などともいわれている。(2)中世から近世前期に用いられた行政単位の名称。中世の国,郷,荘,保という支配系列が戦国時代に荘,保が消滅し郷が領に改編された。関東の場合,後北条氏は軍事組織を衆,行政組織を領としたが,領は数ヵ村の郷村を含んだ広域行政体となった。武蔵国松山領の範域は松山城で吹く法螺貝(ほらがい)の聞こえる範囲といわれる。徳川氏の関東入国を契機に領は継承,再編成された。武蔵国の場合,近世中期幕府の調査によると全22郡に82領の存在が確認されている。それによると,領は1郡内に2~14領が含まれている。近世前期の領は幕府,諸藩の支配単位となり,代官支配地や検地施行の基準となったが,とくに幕領で顕著な貫高制による検地は領別に行われている。近世中期に至り組に改編された例もあるが,領は消滅した。
執筆者:神崎 彰利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の領の言及
【利根川】より
…近世から現在に至るまで行われてきた治水の根本は,利根川のもつこのような地形的特性を考慮したものである。1900年の改修以前の利根川治水は,江戸初期につくられた中条堤と,その南方の埼玉東部平野に散在する多くの〈領〉と称する水防単位によって行われた。中条堤はふつうの堤防と違って利根川の流路と直角に,右岸側の埼玉東部平野北端の熊谷扇状地東端と利根川との間につくられた堤防である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」