(読み)とん

精選版 日本国語大辞典 「頓」の意味・読み・例文・類語

とん【頓】

〘名〙
① (形動) 突然であること。急であること。また、そのさま。とみ。〔羅葡日辞書(1595)〕
② (形動) にぶいこと。まぬけなさま。とんま。
洒落本・卯地臭意(1783)叙「織介(おりすけ)はとんにして、その味はひ苦し」
仏教で、修行の階程を経ないで速く悟りを開くことをいう。また、それを説く教え。
末燈鈔(1333)一四「かれは漸・頓の中の頓、これは頓のなかの頓なり」

とみ【頓】

〘形動〙 時間的に間がおけないさま。また、間をおかないさま。急。にわか。さっそく。「とみの」の形で連体修飾語として、また、「とみに」の形で副詞的に用いることが多く、現代ではもっぱら「とみに」の形で用いられる。
伊勢物語(10C前)八四「さるに、十二月(しはす)ばかりに、とみのこととて御ふみあり」
[補注]語源については「とし(疾)」の語幹接尾語「み」の付いたものとする説もあるが、「土左日記」に見られる「とに」などの形から、「頓」の字音の変化したものと考えられる。

とに【頓】

〘形動〙 (「頓」の字音「とん」から) =とみ(頓)
土左(935頃)承平五年一月一六日「かぜなみ、とににやむべくもあらず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「頓」の意味・読み・例文・類語

ひた‐ぶる【頓/一向】

[形動][文][ナリ]
いちずなさま。ひたすら。「―な態度」「―に思いを寄せる」
完全にその状態であるさま。
「―に煙にだになし果ててむと思ほして」〈夕霧
向こう見ずなさま。また、強引で粗暴なさま。
「海賊の―ならむよりも」〈・玉鬘〉
はなはだしいさま。すこぶる。
「地獄の苦患くげんは―になりぬ」〈今昔・三一・二八〉
[類語]一途ひたすらひたむき一筋ただただただ専一ひとえに一心一念一路一散一目散一直線一本槍一点張り一辺倒一意専心営営せっせ遮二無二無二無三がむしゃら一心不乱脇目も振らず直線的まっしぐら直情径行まっすぐ猪突猛進ストレートしゃかりきしゃにむに無心粉骨砕身無我夢中熱中夢中専心専念没入没頭没我傾注傾倒我を忘れるこんを詰める身を入れる身を砕く心血を注ぐ

とん【頓】[漢字項目]

常用漢字] [音]トン(呉)(漢) [訓]とみに ひたすら
頭を地面につけて礼をする。ぬかずく。「頓首
その場にとどまる。落ち着く。「整頓停頓
すぐに。即座に。急に。とみに。「頓悟頓才頓死頓知
一回。一度。「頓服

とみ【頓】

[名・形動ナリ]《「頓」の字音「とん」の音変化》にわかなこと。急なこと。また、そのさま。→とみ
「―の事にて預め知らするに由なかりしが」〈鴎外舞姫
「―なる召使ひの、来あひたりつればなむ」〈かげろふ・上〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【天台宗】より

…すでに5世紀の初め,クマーラジーバ(鳩摩羅什)が漢訳した《法華経》に基づき,智顗が著した注釈書の《法華玄義》と《法華文句》および《摩訶止観》の3部を根本聖典とする。9世紀の初めに,伝教大師最澄が入唐し,智顗より7代目の道邃と行満について宗旨をうけ,比叡山に延暦寺を創して日本天台をひらくが,最澄は,天台法華宗のみならず,達麿系の禅,円頓戒,密教という,同時代の中国仏教をあわせて,奈良仏教に対抗する新仏教運動の根拠としたため,日本天台は中国のそれとかなりちがったものとなる。とくに密教を重視する後継者によって,智証大師円珍を祖とする園城寺が独立し,天台密教の特色を発揮する一方,鎌倉時代になると浄土宗,禅宗,日蓮宗など,新仏教の独立をみるのは,いずれも日本天台の特色である。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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