須川(読み)すかわ

日本歴史地名大系 「須川」の解説

須川
すかわ

最上川の支流で、流路延長四四・三キロ、流域面積六八一・八平方キロ。源流は蔵王火山とその南西にある舟引ふねひき山で、上山かみのやま盆地・山形盆地南部を北流し、天童市寺津てらづで最上川右岸に合流する。上流は萱平かやたいら川とよばれ、次いでみや川となり、上山市街付近から須川とよばれる。酸性の毒水を含む支流が多く、農業用水としての利用には難がある。上山市楢下ならげで左岸に合流する金山かねやま川は赤山あかやま銅山の廃水によって酸性化し、同市宮脇みやのわきで右岸に合流する生居なまい川も酸性水である。蔵王火山から流下し、上山市北部を西流する蔵王川も硫黄・硫化鉱の鉱床の影響で酸性化している。とくに酸性の強い毒水を流すのは、西蔵王の瀧山りゆうざん火山の爆裂火口内から流下する川である。

須川
すかわ

[現在地名]西有家町須川名

隈田くまた村の南東に位置する。近世は有家村、のち隈田村のうち。一五九〇年(天正一八年)当時千々石ちぢわ(現千々石町)の司祭館の管轄下にあったスカワSucuva村でキリシタンの女が悪魔に取憑かれ、大勢の息子や娘らとともに灯のついた提灯が戸口から入ってくるなどわめき、火中に身を投じようとするほどであったが、十字架の力と信徒の祈りによって正気を取戻したと伝える(フロイス「日本史」)。須川名の向浜むかいはま共同墓地にあるキリシタン墓碑群のうちに、半円柱蓋石形匍匐墓の正面の軸部にポルトガル式ローマ字で「FIRISACYE MÕDIOG XON □□GOX IRAI 1610 IVG. 16 QEICHO 15(フィリ作右衛門ディオゴ生年□□御出生以来一六一〇年一〇月一六日慶長一五年)という碑文が刻まれた墓碑がある。

須川
すがわ

[現在地名]上田市大字諏訪形

小牧こまき山の山頂より北へやや下った山腹にある集落。近世を通じ諏訪形すわがた村の枝郷である。山中に定住した理由は、千曲川の氾濫による洪水の被害を避けるためとも伝えられるが、明確な伝承を欠く。

慶長六年(一六〇一)真田信之が家臣大熊五郎左衛門に与えた知行地の中に「六拾五貫文、小牧(中略)九貫文、須川山畑共ニ」(大熊文書)と記されているのが初見。同一七年二月、信之は長井九助に「於須川御見出之内□□□□所出置候」(大鋒院殿御事蹟稿)として、須川を支配させているほか、同年八月二七日に、信之は「今度新足軽拾五人申付候、此為給分、須川之内拾五貫文出置候」(同文書)と、鈴木久次郎に足軽一五人を預け、その給分を須川郷において給するなど、近世初頭より須川は真田領であった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「須川」の意味・わかりやすい解説

須川 (すかわ)

山形県南東部を流れる最上川の支流。奥羽山脈の舟引山に源を発し,上山盆地で金山川,前川,蔵王川,酸(す)川などの支流を合流し,山形盆地に入って馬見ヶ崎(まみがさき)川,立谷川などを合わせて北流し,天童市寺津西方で最上川に流入する。幹川流路延長44km,全流域面積約682km2。蔵王川合流点より上流は,かつて宮川とよばれた。途中で蔵王火山に源を発する蔵王川,酸川の強酸性河川を合流するため,最上川に合流するまで灌漑用水にも利用できない死の川で,須川の名もこの水質に由来する。下流沿岸の集落船町や寺津は最上川舟運の盛んであった藩政期には,城下町山形の河港として栄えた。
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須川[温泉] (すかわ)

岩手県南西部,一関市にある温泉。栗駒山北側中腹,標高1100m付近にあり,東北本線一関駅からバスの便がある。鳥海山や月山をはるかに望み,6月下旬には高山植物が咲きみだれる。泉質は含ミョウバン・緑バン泉で,泉温48℃。旅館は6月から10月の間のみ開かれる。湯量が多く,蒸気浴の〈ふかし湯〉もあり,古くから〈胃腸の湯〉として知られる。栗駒国定公園に含まれ,栗駒山登山や観光の拠点としても知られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「須川」の意味・わかりやすい解説

須川
すかわ

山形県の南東部を流れる川。最上川(もがみがわ)の支流の一つ。奥羽山脈の舟引山(ふなひきやま)に源を発し、山形盆地を北流して天童(てんどう)市南西部の寺津で最上川に合流する。延長45キロメートル。流域面積682平方キロメートル。途中、蔵王(ざおう)火山に源を発する蔵王川、酸川(すがわ)を合流するが、これらの支流は強酸性の河川で、須川の名も酸性の水質に由来する。そのため下流で馬見ヶ崎(まみがさき)川、立谷(たちや)川などを合流するが、灌漑(かんがい)用水としての利用はむずかしい。江戸時代には沿岸に船町(山形市)、寺津(天童市)などの河港が栄えた。

[中川 重]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「須川」の意味・わかりやすい解説

須川
すかわ

山形県東部,山形盆地の南部を北流する最上川の支流。全長約 43km。奥羽山脈,蔵王山の南,舟引山に源を発し,上山 (かみのやま) 盆地で流路を西から北に変え,蔵王川,酢川を合流して山形盆地に入り,天童市で最上川に注ぐ。酢川は,蔵王温泉に発する酸性の強い川で,合流後の下流部の水は,農業用水としては不適。灌漑用水には,天保4 (1833) 年に築かれた松原新堰から,酢川合流前の水を揚水して利用。

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