韻図(読み)インズ(英語表記)yùn tú

デジタル大辞泉 「韻図」の意味・読み・例文・類語

いん‐ず〔ヰンヅ〕【韻図】

漢字をその字音によって分類整理し図表化したもの。悉曇しったん学などの影響を受けて、唐末から作られるようになった。→韻鏡

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精選版 日本国語大辞典 「韻図」の意味・読み・例文・類語

いん‐ず ヰンヅ【韻図】

〘名〙 中国語音韻体系的に図示した表。現存最古の「韻鏡」(一〇世紀の作)は、四八枚からなり、それぞれ横軸声母(頭字音)を、縦軸に韻を配列し、その交差する位置に、該当字音を持つ字の代表を置く。

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改訂新版 世界大百科事典 「韻図」の意味・わかりやすい解説

韻図 (いんず)
yùn tú

中国音韻学術語。縦軸に声母,横軸に韻母をとり,縦横の組合せによって該当する個所に代表字を配したもので,旧時の音節表である。主母音および介母の違いによって,韻母を一等,二等,三等,四等に4区分した音節表を〈等韻図〉と称する。一般に韻図と等韻図は通じて用いられるが,一方で韻母を開口呼〈介母ゼロ〉,合口呼〈介母-u-〉,斉歯呼〈介母-i-〉,撮口呼〈介母-iu-〉の4呼の別によって区分する韻図などもあるから,厳密にいえば全同でなく,等韻図は韻図の一種ということになる。現存最古の韻図は,唐末五代の作とされる,等韻図の《韻鏡》である。韻図の出現は,韻母部分を中心とした音韻体系の把握がさらに声母部分の観察,分析へと進んだことを意味する。古くから双声,畳韻という音声上のレトリックがありながら,また反切という注音方法で声母部分の観察,分析が進められたはずでありながら,声母すなわち頭子音を音声学的に把握,分類することは,中国人にとって容易でなかったらしい。《韻鏡》にみられる七音の枠,すなわち頭子音の調音部位による唇音・舌音・牙音・歯音・喉音・半舌音・半歯音の7区分,および各枠内の清・次清・濁・清濁という調音方法の区別は,したがって,インド音声学の影響を思わせる。頭子音の代表字を定めて,それを字母と呼ぶが,元来仏典においてアルファベットを意味した〈字母〉が頭子音の個々を意味するようになるのは,インド文字の書写法を仲介にして,はじめて説明可能である。かくのごとく,頭子音の把握にインド音声学の影響を想定することは,許されるであろう。韻図が概して初期のものほど音声学的に精密であり,時代が下るにつれて中国化され,その度合を減ずる傾向にあるのも,このためと考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「韻図」の意味・わかりやすい解説

韻図
いんず

横に声母を,縦に韻母を配列し,その組合せにより中国語の音節を図式的に体系づけた表の集りをいう。その起源は唐代に始るとみられるが,今日に伝わる代表的なものに次のものがある。北宋の『韻鏡』や鄭樵 (ていしょう) の『七音略』は最古のもので,切韻系の韻書の体系に最も近い。次いで,より中世的体系を反映するものとして,『四声等子』,南宋の作とみられる『切韻指掌図』,元の劉鑑 (りゅうかん) の『切韻指南』などがある。その後も,当時の口語を反映する,より新しい韻図がつくられた。韻図を研究する学問を等韻学と称する。

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世界大百科事典(旧版)内の韻図の言及

【等韻図】より

…中国の旧時の音節表。韻図ともいうが,厳密には韻図の一種。縦軸に声母,横軸に韻母をとり,縦横の組合せによって該当個所に代表字を配したものである。…

※「韻図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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