韮崎(市)(読み)にらさき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「韮崎(市)」の意味・わかりやすい解説

韮崎(市)
にらさき

山梨県北西部、甲府盆地の北西端にある市。釜無川(かまなしがわ)と八ヶ岳(やつがたけ)方面から流れる塩川の合流点付近にある。1954年(昭和29)韮崎町と穂坂(ほさか)、藤井、中田穴山(あなやま)、円野(まるの)、清哲(せいてつ)、神山、旭(あさひ)、大草、竜岡村の1町10村が合併して市制施行。JR中央本線、国道20号、141号が通じ、中央自動車道の韮崎インターチェンジがある。戦国時代は武田勝頼(かつより)の居城新府城(しんぷじょう)があり、江戸時代は信州往還佐久(さく)往還、駿信(すんしん)往還の分岐点として栄え、韮崎宿があった。また富士川水運の拠点であり、信州に送られる塩や海産物、県北や信州からの米など鰍沢(かじかざわ)に集まる物資の中継基地でもあった。1904年(明治37)中央本線が開通して宿駅、河港としての機能は衰えたが、北巨摩(きたこま)地方の交通、商業の中心地として今日に及んでいる。合併した旧村はいずれも農村であるが、塩川流域の藤井・中田地区は肥沃(ひよく)な米麦産地、台地上の穂坂・穴山地区は養蚕と果樹、釜無川南岸の円野・清哲・神山・旭・大草・竜岡地区は江戸時代開削された用水路「徳島堰(ぜき)」により開田された米作・養蚕地帯である。しかし、経営面積は比較的小さく、今日では兼業農家が大部分である。先端技術産業の工場が進出し、甲府市のベッドタウン化も進む。周辺には観光地が多く、南アルプスおよび秩父多摩甲斐(ちちぶたまかい)国立公園の玄関口になっており、南アルプスの鳳凰(ほうおう)三山、甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)への登山、金峰(きんぷ)山、増富(ますとみ)温泉へはここを経由する。市域にもレンゲツツジスズランの名所である甘利(あまり)山、御座石(ございし)・青木の温泉、窟(あな)観音などがある。サッカーの盛んなことでは全国的に有名。国史跡に新府城跡、また国重要文化財に武田八幡神社本殿(たけだはちまんじんじゃほんでん)、願成寺(がんじょうじ)の木造阿弥陀(あみだ)如来及両脇侍像がある。面積143.69平方キロメートル、人口2万9067(2020)。

横田忠夫

『『韮崎市誌』全4巻(1978・韮崎市)』


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