韮山城(読み)にらやまじょう

日本の城がわかる事典 「韮山城」の解説

にらやまじょう【韮山城】

静岡県伊豆の国市(旧田方郡韮山町)にあった戦国時代の城郭。龍城山と通称される丘陵に沿って、縦に曲輪(くるわ)が連なる典型的な平山城(ひらやまじろ)だった。15世紀末に伊豆国を平定した伊勢新九郎盛時(のちの北条早雲、伊勢新九郎長氏とも)が拠点としていた城である。駿河の今川氏の客将だった早雲は、興国寺城(沼津市)を居城としていたが、1491年(延徳3)に堀越公方足利茶々丸を攻め滅ぼして伊豆を平定し、ここに新たな居城を築いた。『北条五代記』によれば、韮山城は前堀越公方足利政知(茶々丸の父)の家臣外山豊前守が城を造ったのが始まりとされているが、本格的な城郭として整備したのは早雲である。早雲はのちに小田原城(神奈川県小田原市)を奪って相模に進出したが、早雲自身は小田原城に居城を移すことなく、韮山城で1519年(永正16)に88歳で死去した。北条氏の本城が小田原城に移ったのちも、伊豆支配の拠点として重視し、永禄年間(1558~69年)末期には北条氏康の四男氏規が入城して伊豆国を統治した。1590年(天正18)の小田原の役では、韮山城は豊臣秀次大将とする総勢4万4000といわれる豊臣方大軍の攻撃を受けた。城将の北条氏規は約3600の軍勢とともに籠城し、約100日間持ちこたえたが、ついに降伏・開城した。その後、韮山城は関東に国替えになった徳川家康の持ち城となり、家康家臣の内藤信成が入城した。しかし、1601年(慶長6)の信成転封に伴い廃城となった。丘陵の頂上付近に本丸、次いで二の丸、権現平、三の丸の遺構があり、塩蔵跡や土塁、空堀内堀などが残っている。城跡のほとんどは、江戸時代に韮山代官をつとめた江川太郎左衛門の子孫である江川家の私有地となっている。また、麓の県立韮山高校付近に武家屋敷政庁があった。同高校のグラウンドに御座敷という地名が残っており、この下に早雲の館があったのではないかともいわれている。伊豆箱根鉄道駿豆線韮山駅から徒歩約25分。◇龍城ともよばれる。

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百科事典マイペディア 「韮山城」の意味・わかりやすい解説

韮山城【にらやまじょう】

静岡県韮山町(現・伊豆の国市)韮山にあった中世平山(ひらやま)城。1491年に北条早雲堀越公方(ほりごえくぼう)足利政知(まさとも)の子茶々丸(ちゃちゃまる)を攻め滅ぼして築城したと伝える。1590年の豊臣秀吉による小田原征伐の際に開城するまで小田原北条氏の伊豆支配の本拠となり,1519年には当城で早雲が死去している。1590年3月,北条氏政の弟氏規(うじのり)が守る当城を豊臣方の織田信雄(のぶかつ)ら4万の軍勢が攻撃,氏規は防戦に努めたが,6月に徳川家康の説得を入れて開城。8月家康の関東移封に伴って,その家臣内藤信成(のぶなり)が1万石で入城した。1601年信成が駿河府中(現静岡市)に転封(てんぽう),廃城となった。城跡は田方(たがた)平野に張り出した標高50mの台地上にあり,諸曲輪(くるわ)や土塁・空堀が残る。
→関連項目韮山[町]北条氏綱

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改訂新版 世界大百科事典 「韮山城」の意味・わかりやすい解説

韮山城 (にらやまじょう)

静岡県伊豆の国市の旧韮山町韮山にあった中世の城。1491年(延徳3)北条早雲が堀越公方足利茶々丸を滅ぼして伊豆を征服し,この地に築城したことに始まる。早雲は相模進出後も居城とし,1519年(永正16)に同地で没した。その子氏綱以降北条氏(後北条氏)の本拠は相模小田原城に移ったが,90年(天正18)豊臣秀吉の小田原征伐に際し,当城は山中城とともに小田原城防衛の最前線として重要性を再び増した。北条氏政の弟氏規以下3600の守備する同城に,3月29日から織田信雄ら4万余の豊臣方が攻撃。氏規は防御に努めたが,各地の北条方の支城が相次いで落ちるに及び,徳川家康の説得を入れて6月24日開城した。8月家康の関東移封に伴い,その家臣内藤信成が同城1万石に封ぜられたが,1601年(慶長6)駿河府中に転封後廃城。城は田方平野に張り出した丘陵の突端に築かれ,諸曲輪,土塁,空堀を残す。
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世界大百科事典(旧版)内の韮山城の言及

【伊豆国】より

…将軍義政は僧であった政知を還俗させて,鎌倉に派遣して関東の安定を図ろうとしたが,政知は関東に入ることができず韮山堀越(ほりごえ)に落ち着き堀越公方と称した。91年(延徳3)沼津興国寺城主であった北条早雲は堀越公方を倒し,たちまち伊豆国を奪い韮山城を根拠地とし,のち小田原へ進出する。早雲の伊豆侵略と民政,在地武士の掌握は着実に進められ,在地武士松下(三津),鈴木(江梨),大見三人衆(上村,佐藤,梅原),富永(土肥),山本(田子),高橋(雲見),村田(妻良)等は早雲入国と同時にこれに従った。…

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