非破壊検査法(読み)ひはかいけんさほう(英語表記)non-destructive inspection

日本大百科全書(ニッポニカ) 「非破壊検査法」の意味・わかりやすい解説

非破壊検査法
ひはかいけんさほう
non-destructive inspection

工業材料や製品の欠陥有無を、破壊することなしに検査する方法で、非破壊試験法ともいう。機械や構造物の製作に使用される材料の品質、製作加工技術とともにこの検査法は近年非常に進歩した。また、これらを使用する間になんらかの損傷を受けている可能性もあって、材料や製品に欠陥があるか否かを現物について調べ、要求される機能を安全に果たしうるかどうかを検査する必要がある。この際、製品などを破壊するような試験では意味がなく、検査のために新たな損傷を与えることも好ましくない。このような目的のために、非破壊検査法では、材料のもつ物理的性質を利用して間接的に欠陥の存在、性状を推定する。この検査法によれば、必要に応じて全製品について検査することができるという大きな特長をもっている。

 非破壊検査では、さまざまな物理的エネルギー、すなわち電気、磁気放射線音波、光、熱などが用いられ、物理的現象と物質内に存在する欠陥の性状との相互関係の解明や、それの非破壊検査への応用技術の確立が必要である。現在用いられているおもな非破壊検査法には、(1)放射線透過法、(2)超音波探傷法、(3)磁気探傷法、(4)浸透探傷法、(5)電磁誘導探傷法、(6)アコースティック・エミッション法などがある。(1)放射線透過法 非破壊検査の技術のなかでもっとも早く実用化されたのはX線透過法であるが、現在ではγ(ガンマ)線、β(ベータ)線、中性子線なども使用される。試験の際には、太さの異なる針金などからなる透過度計を試験体と同時に撮影し、検出可能な欠陥の大きさの限界を決める。この方法の原理は、欠陥の部分が放射線を通す能力が他の部分と異なることを利用した影絵写真によるものであるから、体積をもつ欠陥の検出に適しており、割れは検出できないことがある。また、透視検査も可能で、識別度は落ちるが検査時間が短く比較的簡便である。(2)超音波探傷法 打診の原理によるもので、人の耳で聞こえる音でも、その音色、減衰により、ある種の欠陥の存在は検出できるが、欠陥の形や位置まではわからない。これは音の波長が欠陥の大きさに比べて長すぎるためで、微細な欠陥の検出には超音波が利用される。発振装置から出た超音波を試験体の一面から入れ、内部に欠陥があるとそこで反射や減衰がおこるので、反射波や透過波をとらえて解析すれば欠陥の形や性状が推定できるという原理である。使用される超音波の周波数は、試験体の材質、検出しようとする欠陥の種類、表面状況によって適宜定められる。(3)磁気探傷法 磁性材料に磁場を与えると、欠陥が存在する場合、磁場が乱されて磁束の漏れがおこる。この漏洩(ろうえい)磁束を磁粉や磁気テープを用いて測定し欠陥を検出する方法である。磁性材料の表面に近い欠陥の検出に有効で、広く適用されている。(4)浸透探傷法 製品表面にある微細な傷の検出、とくに磁性材料でない金属の場合にこの方法が用いられる。材料表面によく広がる性質をもつ液体に、蛍光剤を溶かし、清浄にした試験体表面に吹きかけて傷にしみ込ませる。表面をよく洗ってから浸透した液を吸い上げる物質をかけ紫外線灯で照らせば、傷の部分が蛍光を発することから欠陥の検出ができる。蛍光剤のかわりに色素が用いられることもある。(5)電磁誘導探傷法 渦流探傷法ともよばれ、交流を流したコイルのインピーダンスが試験体の材質、形状、欠陥の有無により変化する現象を利用する検査法である。(6)アコースティック・エミッション法acoustic emission 物体中に亀裂(きれつ)が発生したり、それが成長する際に生ずる弾性振動、すなわち超音波を、試験体表面に多数の探触子を配して検出し、測定結果を解析して亀裂の位置などを知る検査法である。近年実用化された新しい方法で、いまなお発展の途上にある。

[林 邦夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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