非常(読み)ひじょう

精選版 日本国語大辞典 「非常」の意味・読み・例文・類語

ひ‐じょう ‥ジャウ【非常】

〘名〙
[一] (「常」は不断、平常、また、通念の意) いままでの状態が変わること。
① いつもと変わること。一般的通念では考えられないこと。特別の場合であること。
万葉(8C後)一七・四〇一五・左注「於時、養吏山田史君麻呂、調試失節、野獦乖候。搏風之翹、高翔匿雲〈略〉於是、張設羅網、窺乎非常、奉幣神祇、恃乎不虞也」
※山鹿語類(1665)二一「忠孝を励む〈略〉非常の変ここに来て、臣とし子として明白に其誠をつくさんことは」 〔春秋左伝‐荘公二五年〕
② 特に、天変地異政変など、不時の変事。思いがけない緊急事態
※続日本紀‐和銅四年(711)九月甲戌「凡衛士者、非常之設、不虞之備」 〔史記‐項羽本紀〕
③ 生命にかかわること。死。
※左経記‐長和五年(1016)四月三〇日「於今者従非常何恨之有哉」
[二] (形動) (「常」は、なみ、普通の意)
① 様子が異常であること。また、行動などが非常識であること。無礼であること。また、そのさま。
※中右記‐天仁元年(729)五月二〇日「伴卿自本非常第一之人也。全無所能、以大飲業」
② なみはずれてすぐれていること。また、そのさま。非凡
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一「非常の才能を発生せしむることなれば」 〔史記‐魏世家〕
③ 程度がはなはだしいさま。ひどいさま。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉八「表口は非常(ヒジャウ)混雑
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一「非常に失望した容子で」
[三] (「常」は、不変の意) 仏語。生滅変化してしばらくも同じ状態に止まらないこと。無常。〔無量寿経‐上〕
[補注]中世以前には、かなで「ひざう」と書かれたものがある。→非常(ひぞう)

ひ‐ぞう ‥ザウ【非常】

〘名〙 (形動) (「ぞう」は「常(じょう)」の直音表記) =ひじょう(非常)
※宇津保(970‐999頃)国譲上「わかひさうの時にもあひ見でやみぬべきか」

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デジタル大辞泉 「非常」の意味・読み・例文・類語

ひ‐じょう〔‐ジヤウ〕【非常】

[名]普通でない差し迫った状態。また、思いがけない変事。緊急事態。「非常を告げる電話の声」「非常持ち出しの荷物
[形動][文][ナリ]
並の程度でないさま。はなはだしいさま。「非常に悲しい」「非常な才能」
行動やようすが異常であるさま。
「―な事だと思わないで―なことをするから奇人だろう」〈逍遥当世書生気質
[類語](緊急急難異変事変変事珍事ハプニング奇跡/(1大変大層異常極度けた外れ桁違い並み外れ格段著しい甚だしいすごいものすごい計り知れない恐ろしいひどいえらい途方もない途轍とてつもないこの上ない筆舌ひつぜつに尽くしがたい言語げんごに絶する言語ごんごに絶する並並なみなみならぬ(連用修飾語として)極めて至って甚だごく至極しごく滅法めっぽうすこぶるいともとても大いに実にまことに一方ひとかたならずさんざっぱらさんざんさんざこってり/(2異常特異異状異例別条不自然変ちくりん変てこ変てこりん異様奇異奇妙みょう面妖めんよう不思議不可解不審奇怪奇態風変わり妙ちきりんけったいおかしいおかしな奇天烈きてれつ珍奇新奇珍妙奇抜奇警奇想天外突飛ファンシー突拍子もない言語道断無茶めちゃむちゃくちゃめちゃくちゃめちゃめちゃ滅法法外無理乱暴無体理不尽非理不当不条理不合理非合理狂的

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普及版 字通 「非常」の読み・字形・画数・意味

【非常】ひじよう(じやう)

なみはずれた。ただならぬ。非凡。漢・司馬相如〔蜀の父老を難ず〕蓋(けだ)し世必ず非常の人りて、然る後に非常の事り。非常の事りて、然る後に非常の功り。

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