青梅(市)(おうめ)(読み)おうめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「青梅(市)(おうめ)」の意味・わかりやすい解説

青梅(市)(おうめ)
おうめ

東京都北西部、多摩川の上流域にある市。1951年(昭和26)青梅町と霞(かすみ)、調布(ちょうふ)の2村が合併して市制施行。1955年小曽木(おそぎ)、成木(なりき)、吉野、三田の4村を編入。JR青梅線、国道411号が通じる。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が東部を走り、青梅インターチェンジがある。平将門(まさかど)が願掛けをして挿したウメの木が繁茂し、その実が熟しても青々としていたので青梅とよぶようになったという伝承がある。願いがかなった記念に建立したのが青梅山金剛寺(こんごうじ)といわれ、老梅は都指定天然記念物となっている。

 中心市街地は谷口集落として発達、市場町のほか青梅街道(甲州裏街道)の宿場町でもあった。江戸時代以降は、江戸の大火に伴う復興資材の供給地としての青梅林業がおこり、明治時代まで多摩川の筏(いかだ)流しが盛んであった。また、織物の産地で、青梅縞(じま)、青梅綿、夜具地を生産、現在は夜具地、座ぶとん地のほか着尺(きじゃく)地などを織っている。西東京工業団地(1965年造成)、三ツ原工業団地(1982年造成)に電気機器、ハイテク産業が進出。

 奥多摩の観光地を控え、観光開発も活発で、青梅駅の北東に青梅鉄道公園、石神前(いしがみまえ)・二俣尾(ふたまたお)両駅の多摩川対岸に吉野梅郷(ばいごう)や青梅市吉川英治記念館がある。その上流域は秩父多摩甲斐(ちちぶたまかい)国立公園域。御嶽(みたけ)駅からは、近代日本画の大家川合玉堂(かわいぎょくどう)の作品・遺品を展示する玉堂美術館、御岳山(みたけさん)(頂上に武蔵御嶽(むさしみたけ)神社)が近い。中心市街地の東方は武蔵野台地で、1610年代(慶長(けいちょう)のころ)に開発されてできた新町(しんまち)は、武蔵野新田開発の先駆として知られ、開拓者の家旧吉野家住宅(都指定有形文化財)は当時をしのぶ建築として保存されている。このほか、前述平将門ゆかりの金剛寺、奥多摩の名刹(めいさつ)で境内が都の史跡に指定されている天寧寺(てんねいじ)、火渡りの行(ぎょう)で知られ本堂厨子、仁王門、阿弥陀堂が国の重要文化財に指定されている観音寺(かんのんじ)(塩船観音)もある。天寧寺および観音寺周辺は霞丘陵自然公園となっている。面積103.31平方キロメートル、人口13万3535(2020)。

[沢田 清]

『『稿本青梅市史』全5巻(1957~1958・青梅市)』『『定本市史青梅』(1966・青梅市)』『『青梅市史』上巻・下巻(1995・青梅市)』


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