青木周弼(あおきしゅうひつ)(読み)あおきしゅうひつ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

青木周弼(あおきしゅうひつ)
あおきしゅうひつ
(1803―1863)

江戸末期の蘭方医(らんぽうい)。周防(すおう)国(山口県)大島郡和田村(現、周防大島町)の村医青木玄棟(げんとう)の長子。名は邦彦。月橋と号し、周弼は字(あざな)。幼時長州藩医能美洞庵(どうあん)(1794―1872)に儒学と医学を学んだ。18歳のころ大坂に、30歳ごろ江戸に行き、深川でオランダ語と基礎・臨床医学を教えていた坪井信道(しんどう)に学び、その紹介で宇田川榛斎(しんさい)にも師事緒方洪庵(おがたこうあん)と同門であった。また弟の研蔵(1815―1870)を同行し長崎でシーボルトにも入門した。1839年(天保10)萩藩医となり、1842年周防医学所教授蘭学掛となり、続いて医学校の好生館(解剖、生理、病理学、治療、薬性、舎密(せいみ)を指導)の設立に尽くし、1855年(安政2)御側医(おそばい)に累進した。研蔵の協力を得て藩内に種痘を実施、普及させ、コレラの予防、治療に貢献した業績は大きい。時勢に明るく藩主へのよき建言者となり、村田清風とも交流した。門人も多く、晩年には江戸の西洋医学所頭取(とうどり)の就任交渉を受けたが辞退した。著作に『袖珍内外方叢(しゅうちんないがいほうそう)』『察病論』などがある。

[末中哲夫]

『『青木周弼』(1941・青木周弼先生顕彰会)』

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