(読み)あられ

精選版 日本国語大辞典 「霰」の意味・読み・例文・類語

あられ【霰】

〘名〙
① 空中の雪に過冷却の水滴が付着した、白色不透明な、小さな粒状のもの。冬期に限るが、古くは、夏に降る雹(ひょう)を含めてもいう。《季・冬》
※古事記(712)下・歌謡「笹葉(ささば)に 打つや阿良礼(アラレ)の」
堀河百首(1105‐06頃)冬「人とはで葎は宿をさせれども音するものは霰なりけり〈大江匡房〉」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一六「硝煙空に漲(みなぎ)りて、弾丸は霰(アラレ)と飛違ふ」
② 兜・釜、鉄瓶等の胴の表面に鋳出した小さな粒状の突起。霰星。
※人情本・恋の若竹(1833‐39)初「あられの様子が、ちっと可笑いから返しやした」
米粒をよく乾燥させ、細かくした糒(ほしい)をいったものを湯に浮かして飲むもの。
みじん粉に砂糖を混ぜて固め、四角に切った菓子
⑤ 盆、年忌、葬式などに際し、野菜さいの目に刻んだ供物。蓮の葉にのせて供える。あらよね。水の実。
⑥ 「あられじ(霰地)」の略。
※三条家装束抄(1200頃か)「上袴〈略〉地は小石畳 号之霰也」
⑧ 「あられざけ(霰酒)」の略。
随筆・独寝(1724頃)下「これが家の酒は公儀にもあがるなる、名高きあられなどいふうるはしき物成(なる)よし」
※人情本・春告鳥(1836‐37)五「風鈴蕎麦の声かすかに遠く風につれて、『はな巻てんぷらあられでござゐ』」
⑩ 「あらればい(霰灰)」の略。
※紋章(1934)〈横光利一〉「これは霰とふくさを折半にいたしてみたのですが、煮出すとき晩茶が少し濃すぎたやうに思はれましたのですけれど」
⑪ 「あられもち(霰餠)」の略。《季・冬》
※御湯殿上日記‐元亀二年(1571)五月二九日「ふしみよりあられ一ふたまいる」
※彼女とゴミ箱(1931)〈一瀬直行〉ゴミ箱「オセンベイ屋から日に一度はこぼれたアラレと、店の内外を掃いた芥が、裏口の芥溜に捨てられる」
⑫ 食品を、さいの目に切る切り方。
[語誌](1)「和名抄」「色葉字類抄」また、節用集等の辞書でも、「霰」「丸雪」とともに「雹」もアラレと訓じていて、季節を問わずアラレといったらしい。
(2)上代、既に「霰打つ」「霰たばしり」とその音が注目され、「和漢朗詠集」「古今六帖」では霰が歌題とされていて、「堀河百首」で冬の歌材として定着する。

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デジタル大辞泉 「霰」の意味・読み・例文・類語

あられ【×霰】

雲の中で雪に微小な水滴が凍りつき、白色の小さい粒となって降ってくるもの。雪霰ゆきあられ氷霰こおりあられとがある。気象用語では直径5ミリ未満が霰、5ミリ以上がひょう 冬》「呼かへす鮒売ふなうり見えぬ―かな/凡兆
料理で、小さくさいの目に切ること。また、切ったもの。「に刻む」
干飯ほしいいったもの。
霰餅あられもち」に同じ。
霰小紋」に同じ。「地の織物
蕎麦そば」に同じ。
[類語]氷雨みぞれひょう白雪はくせつ白雪しらゆきダイヤモンドダスト淡雪綿雪牡丹雪粉雪細雪締まり雪ざらめ雪小雪風花大雪豪雪どか雪吹雪吹雪く地吹雪雪嵐暴風雪ブリザード雪煙初雪新雪積雪根雪万年雪深雪しんせつ深雪みゆき残雪春雪

さん【霰】[漢字項目]

[音]サン(慣) セン(呉)(漢) [訓]あられ
あられ。「霰弾さんだん急霰きゅうさん

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改訂新版 世界大百科事典 「霰」の意味・わかりやすい解説

霰 (あられ)

あられ餅の略。こまかくさいの目などに切って乾燥した餅を,炒(い)ったり揚げたりしてふくらませ,塩,しょうゆ,砂糖などで味をつけたもの。ノリを巻いたり,トウガラシを振ったものなどもある。雛祭に供える雛あられのように糒(ほしい)を炒ったものを,この名で呼ぶこともある。文献に名が見られるのは江戸時代のはじめごろからであるが,当時もいまと同じように,のし餅や海鼠(なまこ)餅を切って作ったらしく,井原西鶴の《武道伝来記》巻一(1687)には〈搔餅(かきもち),霰餅(あられ)をきざみゐしが〉という表現が見られる。なお,日本料理ではこまかいさいの目に切ったものをあられと呼び,また,かけそばに貝柱を加えたものをあられそばというが,室町期には〈霰酒(あられざけ)〉をあられということが多かった。霰酒は奈良の特産として知られたみりんの一種で,もろみが白く残るのでこの名があるという。
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霰 (あられ)

雲の中で雪の結晶や凍結した水滴に過冷却した微小な水滴(雲粒)が次々に衝突して凍りつくと,大きさが数mmの柔らかくてもろい白色不透明の球形あるいは円錐形の氷の粒となる。これがあられ(気象学では雪あられという)で,にわか雪のときなどに音を立てて降る。あられは初冬のころ本州の太平洋沿岸地方で降ることもあるが,日本海沿岸地方では冬の間を通じて降る。これは強い寒気団の南下に伴う対流性の雲が発達してあられをもたらすからである。気象学ではあられを雪あられと氷あられに区別している。氷あられは芯は雪あられと同じだが,外側は氷の層でできているので,つぶすのが難しいくらい硬い。成因はひょう(雹)と同じである。大きさが5mm以上のものをひょうとよんでいる。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「霰」の解説

あられ【霰】

①小さく切った餅(もち)を乾かし、焼いたり揚げたりして、塩・しょうゆ・砂糖などで味をつけた菓子。えび・のり・ごまなどを用い、さまざまな風味を加えて作るものもある。細かい粒状に作ったものは茶漬けに用いる。◇「あられ餅」の略だが、「あられ餅」は餅を小さくさいの目に切って乾かした状態のものをいうことが多い。「かきもち」「おかき」ともいうが、「あられ」は比較的小さなものをいうことが多い。茶漬け用のものは京都で「ぶぶあられ」ともいう。
②ほしいいをいって細かくしたもの。湯に浮かせて飲む。
③野菜などを小さなさいの目に切ったもの。「あられに切る」などのように用いる。⇒あられ切り

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デジタル大辞泉プラス 「霰」の解説

石材の名。山口県美祢市で産出される大理石、美祢大理石の銘柄のひとつ。

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