霞・翳(読み)かすむ

精選版 日本国語大辞典 「霞・翳」の意味・読み・例文・類語

かす・む【霞・翳】

[1] 〘自マ五(四)〙 物の形や音、声などがぼやけてはっきりしない状態になる。
かすみがかかる。かすみがたちこめる。
万葉(8C後)九・一七四〇「春の日の 霞(かすめる)時に」
源氏(1001‐14頃)若紫「夕暮のいたうかすみたるに紛れて」
② 姿がかすかにしか見えない状態になる。
古今(905‐914)秋上・二一〇「春霞かすみていにしかりがねは今ぞ鳴くなる秋霧のうへに〈よみ人しらず〉」
③ 薄くぼかしてある。また、かすれてはっきり見えない状態になる。
※三嶋千句(1471)三「こゑまちしゆふつけ鳥に年越て かりねの夢はすゑぞかすめる」
④ (翳) 目に故障があったり、視力が衰えたりして、物がはっきり見えなくなる。
※拾玉得花(1428)「老眼霞て」
⑤ 存在が目立たなくなる。ぱっとしない状態になる。取るに足りない存在になる。
史記抄(1477)五「其様にかすんだ俸祿の者は」
⑥ 声や音などが小さくなってはっきりしないようになる。
※春夢草(1515‐16)付句「鐘のこゑ、いづくともなくほのかにかすみてきこゆにて」
意識などが、ぼんやりした状態になる。
※不意の声(1968)〈河野多恵子〉「意識は幽んでいるのだろうか」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒かすめる(霞)
[補注]「かすむ」の語幹「かす」は「かすか」「かそけし」の「かす」「かそ」と語源的に同じといわれる。

かす・める【霞・翳】

〘他マ下一〙 かす・む 〘他マ下二〙
① はっきり見えたり聞こえたりしないようにする。ぼやけた状態にする。
四河入海(17C前)一「君子の明はもとの如にして、終にかすめられはせぬぞ」
※雁(1911‐13)〈森鴎外一二「『それに女中部屋にも聞える』翳(カス)めた声に力を入れて云ったのである」
歌舞伎で下座音楽を弱く静かに演奏する。⇔生(お)やす
※歌舞伎・天満宮菜種御供(1777)二「『イザ、お立ちなされ』トかすめて管絃になる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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