出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
古くから知られていた,中国医学の病名の一つで,嘔吐と下痢を起こし,腹痛や煩悶なども伴う病気の総称である。暑い時に冷たい飲食物をとりすぎるなど,冷熱の調和を乱すことによって起こると考えられていた。乾霍乱,熱霍乱,寒霍乱など種々の病名が記載されている。病状からみてコレラや細菌性食中毒などを含む急性消化器疾患と考えられる。現在の中国語では霍乱はコレラのこと。
執筆者:赤堀 昭
日本では一般に日射病などの暑気あたりの諸病をさすが,古くは中国と同様激しい腹痛,下痢,嘔吐を伴う急性胃腸炎のことをいった。平安末期の絵巻物《病草紙》に,〈霍乱の女〉という嘔吐と下痢で苦しんでいる描写がある。詞書に〈霍乱といふ病あり。はらのうち苦痛さすがごとし。口より水をはき,尻より痢をもらす。悶絶顚倒して,まことにたとへがたし〉と記されている。当時は〈しりよりくちよりこくやまひ〉とも呼ばれた。なお,平素ひじょうにじょうぶな人が珍しく病気になることのたとえを〈鬼の霍乱〉という。
執筆者:立川 昭二
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