電解研摩(読み)でんかいけんま(英語表記)electro-polishing

精選版 日本国語大辞典 「電解研摩」の意味・読み・例文・類語

でんかい‐けんま【電解研摩】

〘名〙 電気分解を利用した金属研摩法。電気めっきとは逆に金属材料陽極にし、陰極に不溶性の金属を用い、電流を通すと材料表面溶解してなめらかになる。アルミニウム・錫(すず)・炭素鋼・銅・ニッケル材などの装身具洋食器、精密機械部品の研摩に用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電解研摩」の意味・わかりやすい解説

電解研摩
でんかいけんま
electro-polishing

金属の陽極溶解現象を利用して表面を研摩する方法。すなわち、被研摩物である金属製品を陽極(アノード)、不溶性の金属電極を陰極(カソード)として研摩浴中で直流電解し、金属製品の表面をわずかに溶解させることにより研摩する。電解研摩の機構は次のように考えられている。すなわち、研摩時の金属表面には薄い固体皮膜層と比較的厚い粘液層が存在し、この二つの層を通して溶解が行われることにより、金属表面の幾何学的あるいは結晶学的不均一に由来する溶解速度の差が調整される。固体皮膜層は光沢化に、また粘液層は平滑化に寄与しているといわれている。

 銅およびその合金の電解研摩にはリン酸浴、リン酸‐クロム酸浴などが用いられる。このリン酸浴による研摩法は、1935年フランス人のヤッケP. A. Jacquetにより初めて提案された歴史的なものである。鉄鋼の電解研摩には過塩素酸浴、リン酸‐硫酸浴、リン酸‐クロム酸浴などが、またアルミニウムおよびその合金に対してはリン酸浴、リン酸‐硫酸‐クロム酸浴、水酸化ナトリウム浴などが用いられている。電解研摩面の特徴は、機械研摩面に存在するような加工変質層が存在しないこと、薄い陽極酸化皮膜が形成されており耐食性がよいことなどである。

[杉本克久]

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