電気二重層(読み)デンキニジュウソウ

デジタル大辞泉 「電気二重層」の意味・読み・例文・類語

でんき‐にじゅうそう〔‐ニヂユウソウ〕【電気二重層】

ある面の両側に正負電荷それぞれ密度で連続的に分布したもの。電気双極子の正負の向きを揃えて並べた状態に等しい。通常、異種の物質が接触する部分や、電気分解における電極と電解液界面などに生じる。

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化学辞典 第2版 「電気二重層」の解説

電気二重層
デンキニジュウソウ
electrical double layer

固体面が電解質溶液に接触すると,正または負イオンの選択的吸着が起こり,固体面は正または負に荷電したことになり,これに対して,溶液側では反対電荷の対イオンが多くなって,全体として,正負の電荷が界面分布すると考えることができる.これを界面電気二重層という.H.L.F. Helmholtz(ヘルムホルツ)はもっとも簡単なモデルとして,正・負イオンが1:1に対立する分子状コンデンサーを考えて,種々の界面電気現象を説明した(1879年).その後,この考え方は修正されて,溶液中の対イオンの一部は,固体面に吸着するイオンと対立的固着層を形成するが,大部分の対イオンは,ブラウン運動のために固着層から離れるに従って漸減するように拡散的に分布するものと考えられるようになった(1910~1913年).これを拡散電気二重層といい,この種のイオン固着層をStern層,拡散層のことをGouy-Chapmanの拡散層とよぶ.固体面と溶液との間に相対運動が起こるとき,固定イオン層と可動溶液層との間に生じる電位差界面動電位(ζ電位)で,界面動電現象はこの電位差にもとづいて説明される.B.V. Derjaguin,L. Landau,E.J.W. Verwey,J.Th.G. Overbeekらは,この電気二重層の電位の分布,二重層間の相互作用(斥力引力)や電解質のイオン化の影響などについて詳細に考察した.これをDLVOの理論という.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電気二重層」の意味・わかりやすい解説

電気二重層
でんきにじゅうそう
electrical double layer

一つの面の一方側に正電荷が、他方側に負電荷が分布して、その間の間隔が狭く、それらの電荷の面密度が等しい場合、これを電気二重層という。異種物質が互いに接触した場合によく現れる。正または負の電位とした電極を電解質溶液に浸した場合には、溶液中の電荷をもったイオンが電極の界面に集まって正または負の電荷を帯びた層を生じて電気二重層が形成される。これをヘルムホルツ層という(分子容量説、1879年)。さらに、溶液内部に向かってイオンが拡散的に分布して拡散層を形成すると考え、拡散二重層という(拡散二重層説、1913年)。現在では、1924年にアメリカのO・シュテルンがこれら2説を組み合わせた説(シュテルンの二重層)を提出し、だいたいにおいてこれが認められている。

[戸田源治郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「電気二重層」の意味・わかりやすい解説

電気二重層 (でんきにじゅうそう)
electric double layer

物体の薄い層を考えたとき,一つの面に正電荷,他の面に負電荷が連続的に,かつ面密度が等しい状態で分布しているものをいう。すなわち,電気双極子(双極子)からなる二重層である。異なる相の境界では通常電荷の再配列が起こり,電気二重層がよく現れる。固体と電解質水溶液の界面では,溶液中の正負のイオンのいずれか一方の選択的吸着,固体表面分子の解離,双極子の界面への配列吸着などが電気二重層の成因となる。この電気二重層は種々の界面電気化学現象,たとえば電極反応,界面動電現象(界面電気現象),コロイドの安定性などとも密接な関係をもっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電気二重層」の意味・わかりやすい解説

電気二重層
でんきにじゅうそう
electric double layer

きわめて薄い膜の表と裏とに等量ずつ正負の電荷が相対して連続分布したもの。金属の表面,金属と金属,金属と液体との接触面に,または2つの絶縁体をすり合せて摩擦帯電させたときなどに,種々の原因でできる。界面電気現象接触電位差の説明に重要な概念である。電気二重層の間隔を l ,表面に分布する電荷密度を σ とすれば,その両側の電位 は σl0 だけ不連続に変る。 ε0 は真空の誘電率である。

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