電子ビーム溶解炉(読み)でんしビームようかいろ(英語表記)electron beam melting furnace

改訂新版 世界大百科事典 「電子ビーム溶解炉」の意味・わかりやすい解説

電子ビーム溶解炉 (でんしビームようかいろ)
electron beam melting furnace

10⁻4~10⁻5mmHgの高真空において,加速電圧14~35kVの電子銃から発射された電子ビームによって金属溶解し,水冷銅鋳型で凝固させて鋳塊を製造する炉。電子ビームによる加熱効率は75~85%であり,高温が得られる。高真空度と同時に短時間で高温度が得られることから,高融点の活性金属であるチタンTi,ジルコニウムZr,タンタルTa,ニオブNb,モリブデンMoなどの溶解および精錬に適する。さらに,蒸気圧の高い不純物元素およびガス成分の除去に優れており,粗金属を再溶解して精製するさいにも使用される。電子ビームの溶解しようとする金属への衝撃形式と,電子ビームを当てた場合の溶解金属の移動形式とによって,フローティングボート溶解法,滴下溶解法,溢流(いつりゆう)溶解法などに分類される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子ビーム溶解炉」の意味・わかりやすい解説

電子ビーム溶解炉
でんしビームようかいろ
electron beam melting furnace

自己加速型の電子銃により電子ビームを照射して対象物を加熱溶解する合金鋼や高融点(→融解)の金属,活性金属の溶解に用いられ,高純度インゴットを得るのに適している。真空中で溶解し,水冷銅鋳型を用いて成型する。滴下溶解法として,垂直棒送り方式と水平棒送り方式がある。(→電子ビーム加工

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子ビーム溶解炉」の意味・わかりやすい解説

電子ビーム溶解炉
でんしびーむようかいろ

溶解しようとする金属に電子線を当て、電子が衝突したとき発生する熱を熱源として溶解を行う炉。高い真空度の下で溶解が行われるため、水素酸素窒素などの気体元素や蒸気圧の高い不純物金属元素が除去できる。タンタル、ニオブ、モリブデン、タングステンなどの高融点金属の溶解に使用される。とくにタンタル、ニオブを電子ビーム溶解したものは、アーク溶解したものに比し加工性が改善され、靭性(じんせい)が向上する。

[小岩昌宏]

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