電子ガス(読み)でんしガス(英語表記)electron gas

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子ガス」の意味・わかりやすい解説

電子ガス
でんしガス
electron gas

電子集団気体とみなすときの名称金属中の自由電子電荷をもつことを除けば通常の気体のように考えると便利な場合がある。最も簡単には,電子間の相互作用はないものとして,ただフェルミ統計に従う自由粒子の系と考える。しかしその縮退温度が数千度に達するので,普通温度では古典統計力学理想気体とは異なったふるまいをする。電子間のクーロン相互作用を考慮するときには,イオン空間に一様に分布していると仮定して,電気的な中性が保たれるようにする。この場合の正統な取扱法は知られていないが,多体問題の1つの好例としてよく研究されている。もっと複雑な相互作用を考える場合もあり,その場合には電子液体と呼ぶことがある。

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化学辞典 第2版 「電子ガス」の解説

電子ガス
デンシガス
electron gas

金属では,価電子が結晶内部をほとんど自由に運動していると考えられる(自由電子).このような電子の集まりを電子ガスという.H. Lorentzはこれを古典統計に従う理想気体として扱ったが,正しくはフェルミ統計に従う気体として論じなくてはならない.電子ガスは,その密度に応じて縮退という現象を示す.普通,金属の電子ガスの縮退温度は数千 K に達する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の電子ガスの言及

【気体】より

…例えば金属中の電子の運動を気体分子の運動になぞらえて理解しようとする場合がある。このときには電子気体とか電子ガスという概念が用いられる。また液体ヘリウム4の性質を調べる一つの模型として,相互作用の働かないボース粒子の集団を考えることがある。…

※「電子ガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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