雲霧仁左衛門(読み)くもきりにざえもん

改訂新版 世界大百科事典 「雲霧仁左衛門」の意味・わかりやすい解説

雲霧仁左衛門 (くもきりにざえもん)

江戸時代享保期(1716-36)の盗賊だが実在は疑わしい。因果小僧六之助。素走り熊五郎,木鼠吉五郎,おさらば伝次ら5人を称して雲霧五人男とするが,その首領天保期(1830-44)になってから,講釈にしくまれてその活躍が《大岡政談》の題材となった。天保期の直接交渉のない6人をあつめてひとつのはなしに仕立てた《天保六花撰》と同様の趣向といってよく,《雲霧五人男》には,《享保五人男》なる異題もある。3世桜田治助,河竹黙阿弥などによって脚色された《竜三升(りゆうとみます)高根雲霧》は,1861年(文久1)守田座で初演され,のち黙阿弥の書いた部分が《誡草芒野晒(いましめぐさすすきののざらし)》(因果小僧)として独立して上演されるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雲霧仁左衛門」の意味・わかりやすい解説

雲霧仁左衛門
くもきりにざえもん

講釈などで取り上げられる江戸時代の盗賊の頭目。手下の小頭には、木鼠吉五郎(きねずみきちごろう)、おさらば伝次、山猫三次、因果小僧六之助、洲走熊五郎(すばしりくまごろう)がいる。これらの盗賊のことは講釈に仕組まれ、「大岡(おおおか)政談」の一つとなっている。仁左衛門らは、甲州北巨摩(きたこま)郡荊沢(ばらざわ)村の大百姓である文蔵夫婦が急用関所を通らずに通行したことを知り、偽役人になりすまし、その取調べと偽って文蔵方の1万2000両の大金を盗んだ。彼らはそれを分配し、それぞれ生業をもち堅気となった。仁左衛門は桔梗屋五郎右衛門(ききょうやごろうえもん)と名を改め、遊女屋を営んだが、手下の六之助を殺したことからついに捕らえられてしまう。この話は事実ではなく、天保(てんぽう)期(1830~44)に創作されたらしい。歌舞伎(かぶき)にもなり、『竜三升高根雲霧(りょうとみますたかねのくもきり)』などの作品がある。

[芳井敬郎]

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デジタル大辞泉プラス 「雲霧仁左衛門」の解説

雲霧仁左衛門

池波正太郎の長編時代小説。1974年刊行。
②1978年公開の日本映画。①を原作とする。監督:五社英雄、脚本池上金男。出演:仲代達矢、岩下志麻、長門裕之、あおい輝彦、倍賞美津子、夏八木勲、宮下順子ほか。第21回ブルーリボン賞助演女優賞(宮下順子)受賞。
③①を原作とする日本のテレビドラマ。放映はフジテレビ系列(1979年7月~9月)。快刀乱麻の大盗賊、雲霧仁左衛門を主人公とする時代劇。出演:天知茂、大谷直子、田村高廣ほか。
④①を原作とする日本のテレビドラマ。放映はフジテレビ系列(1995年11月~1996年3月)。全12回。時代劇。脚本:宮川一郎ほか。出演:山崎努、石橋蓮司、池上季実子ほか。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「雲霧仁左衛門」の解説

雲霧仁左衛門 くもきり-にざえもん

講釈などに登場する江戸時代の盗賊。
「雲霧五人男」の頭領。手下に因果小僧六之助,素走り熊五郎,木鼠(きねずみ)吉五郎,おさらば伝次がいる。享保(きょうほう)のころ関東一帯をあらしまわったとされる。天保(てんぽう)(1830-44)のころ「大岡政談」のひとつとして講釈に仕組まれた。

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