日本大百科全書(ニッポニカ) 「雨食」の意味・わかりやすい解説
雨食
うしょく
降雨が原因となって生ずる侵食。雨食には布(面)状侵食、雨溝侵食および雨滴侵食とがある。
布状侵食(または面状侵食)は、雨が斜面上を面的に流れて侵食する現象で、乾燥地域で、たまに降る豪雨によってしばしば布状洪水が生じて、斜面上の物質を流去する現象がおこる。これが、乾燥地域に広く分布するペディメントpedimentと称する緩斜面の形成の最大の原因と称される。湿潤地域でも台風や前線に伴う豪雨によって布状侵食が生ずるが、観察によると布状の流れの距離は案外短く、これを繰り返すことによって斜面上の物質を下方へ運搬する。
雨溝侵食は、雨水が斜面上を流れて多数の溝を形成して侵食を行う現象で、農業機械が横断できない程度の大規模な雨溝による侵食をガリーgully侵食、小規模な雨溝による侵食をリルrill侵食という。雨滴侵食は、雨滴の打叩(だこう)エネルギーによって土壌の粒団構造が破壊されて、運搬しやすい状態にするとともに、斜面上では流水が生じなくとも土壌を斜面下方に運搬する。これをスプラッシュsplash侵食とも称し、布状、雨溝侵食とともに土壌侵食の形式となっている。
[市川正巳]