離巣性(読み)リソウセイ(英語表記)nidifugous

デジタル大辞泉 「離巣性」の意味・読み・例文・類語

りそう‐せい〔リサウ‐〕【離巣性】

鳥のひな孵化ふか直後巣を離れ、自立して生活する性質地上で営巣するカモ・チドリ・キジなどにみられる。⇔留巣性

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「離巣性」の意味・わかりやすい解説

離巣性
りそうせい
nidifugous

孵化してすぐ,あるいは数日以内に巣を離れる性質。キジ類やカモ類,チドリ類,カイツブリなど地上性の鳥や水鳥の雛は,孵化時にスズメなどの小鳥類よりかなり発達した状態になっており,目が開き,体が羽毛で覆われ,歩き回ることができる。孵化するとすぐに巣を離れ,親鳥について歩くものが多い。これに対して小鳥などの雛は孵化時には目が閉じ,体に羽毛がなく,動き回ることができず,飛べるようになるまで巣にとどまって育てられる(→留巣性)。離巣性の雛の巣立ち後の状態は,生息場所や繁殖の仕方により異なる。ツカツクリ類の雛は孵化時には飛んで逃げられるほど体が発達しており,親鳥の世話を受けずに独立し,食べ物も独力でとる。ズグロガモ Heteronetta atricapilla托卵性で,仮親に抱卵されて孵化した雛はすぐに独立できる。採食についても違いがあり,カモ類やチドリ類などの雛は自分で食べ物をとるが,カイツブリやクイナ類,ツル類などの雛は,巣を離れたあとも親鳥のとった食べ物を与えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「離巣性」の意味・わかりやすい解説

離巣性
りそうせい

鳥類の雛(ひな)が孵化(ふか)直後、あるいは孵化後の比較的早い時期に、自力で巣を離れる性質をいう。カモ類、シギ類やチドリ類、キジ類など地上営巣性の種でこの性質が発達している。これらの種の雛は孵化時にすでに開眼しており、身体は綿毛に覆われ、まもなく立ち上がって歩いたり、走ったりすることができる。しかし、すぐには自力で餌(えさ)をとれないので腹腔(ふくこう)内に卵黄を蓄えている。また、なるべく短時間で全卵が孵化を済ませるために、孵化が近づいた雛たちは、卵の殻を通して互いに音声で連絡をとり合いながら、孵化を同調させるという事実も知られている。これらの性質が進化してきた背景には、地上に営巣することに対する捕食の危険性が考えられる。カモメ類は地上営巣性で雛の諸形質も離巣性のものに近いが、捕食者が近づきにくい離れた小島断崖(だんがい)などに営巣するため、雛は長い間巣にとどまり、親の給餌(きゅうじ)を受けている。

山岸 哲]

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世界大百科事典(旧版)内の離巣性の言及

【育児】より

…鳥類はふつう産卵後20日前後,一般に雌が抱卵するが,ハトでは雌雄が交代し,タマシギでは雄が抱卵する。地上に巣をつくり産卵する種は,ひなは孵化直後から独立して行動するものが多い(早成性または離巣性)。このような鳥のひなは,孵化と同時に目があき,羽毛も生えそろって歩行も可能であり採餌もする。…

【鳥類】より

…後の場合には卵が小さくなるから母鳥の飛翔はそのぶんだけ楽になる。前者はニワトリやカモに見られるもので,その雛を早成性precocial,または離巣性nidifugousであるという。後者はスズメやツバメに見られるもので,その雛を晩成性altricial,または留巣性nidicolousであるという。…

※「離巣性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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