雑節(読み)ざっせつ

精選版 日本国語大辞典 「雑節」の意味・読み・例文・類語

ざっ‐せつ【雑節】

〘名〙 暦で、陰暦時代以来、二十四節気以外に季節の移り変わりを示すために入れられた目印点の総称節分八十八夜入梅半夏生二百十日土用彼岸など。

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デジタル大辞泉 「雑節」の意味・読み・例文・類語

ざっ‐せつ【雑節】

二十四節気以外に、季節の変化目安とする特定の日の総称。節分八十八夜入梅半夏生はんげしょう二百十日土用彼岸など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雑節」の意味・わかりやすい解説

雑節
ざっせつ

日本の暦(こよみ)で二十四節気(せっき)以外の、季節の目安となるような日をいう。現在、暦には節分(せつぶん)、彼岸(ひがん)、社日(しゃにち)、八十八夜(はちじゅうはちや)、入梅(にゅうばい)、半夏生(はんげしょう)、二百十日、土用(どよう)が記載されている。節分は季節の変わり目で、元来1年に4回あるが、現在は立春の前日の節分だけが記載される。彼岸は春分秋分を挟んでその前後3日、あわせて7日間で、初めの日を「彼岸の入り」として暦に記す。社日は春分・秋分に近い戊(つちのえ)の日である。八十八夜、二百十日は立春の日から数えてそれぞれ88日目、210日目にあたる日である。入梅は旧暦時代は五月節芒種(ぼうしゅ)に入って第一の壬(みずのえ)の日をとったが、「明治九年暦」からは太陽の黄経が80度に達したときで、現行暦の6月11日ごろである。半夏生は夏至(げし)の第三候で夏至から数えて11日目にあたり、現行暦では太陽の黄経100度に達したときで7月2日ごろである。土用は四季の終わりに各18日間あるが、その初めの日を「土用入り」と称して暦に記す。現行暦では春、夏、秋、冬の土用入りは太陽黄経が27度、117度、207度、297度に達したときで、およそ4月17日、7月20日10月21日、1月18日ごろである。四季の土用のうち夏土用だけが一般に用いられている。

[渡辺敏夫]

『渡辺敏夫著『日本の暦』(1976・雄山閣出版)』『渡辺敏夫著『暦のすべて』(1980・雄山閣出版)』

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改訂新版 世界大百科事典 「雑節」の意味・わかりやすい解説

雑節 (ざっせつ)

現在,国立学校設置法4条1項により,暦書編製を行うことになっている東京天文台では,毎年2月1日付の官報に翌年の暦象要項を発表している。その雑節の項には四季の土用,節分,春秋の彼岸,八十八夜,入梅,半夏生,二百十日の日付が記載されている。1873年より太陽暦が採用されたが,その改暦詔書で従来の暦本に記載されていた迷信的暦注は世に害をなすものとしていっさい禁止された。その際それらの暦注の中から,単なる迷信とはいいがたく,行事的な意味で国民の生活に結びつきのあるものが雑節の名で集められ残された。初めは上記のほかに社日と二百二十日も含まれていた。雑節なることばは江戸時代の文献にはなく,改暦以後に用いられるようになったもので,二十四節気のように暦学上の意味もなく厳密な定義もない。社日は暦本には古くより記載されていたが,もともと中国の行事で日本では重きを置かれず,またその選日も,春分,秋分に近い戊(つちのえ)の日という迷信臭もあるため,現在は入れていない。雑節は江戸時代の庶民にとっては二十四節気よりもずっと重視されていたが,現代人にとっては無意味なものが多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雑節」の意味・わかりやすい解説

雑節
ざっせつ

日本の暦用語。二十四節気以外の季節を示す。太陰太陽暦 (旧暦 ) で用いられたものであるが,1873年に太陽暦に改められたのちも,旧暦の名残りとして雑節が現行暦にも記載されている。それらを年の初めから順に示せば次のとおりである。冬の土用 (立春の直前 18日間) ,節分 (立春の前日) ,春の彼岸 (春分の日を中日として7日間) ,春の土用 (立夏の直前 18日間) ,八十八夜 (立春から数えて 88日目) ,入梅 (太陽の黄経が 80°に達した日) ,半夏生 (太陽の黄経が 100°に達した日) ,夏の土用 (立秋の直前 18日間) ,二百十日 (立春から数えて 210日目) ,秋の彼岸 (秋分の日を中日として7日間) ,秋の土用 (立冬の直前 18日間) 。このほか旧暦では,春の社日,二百二十日,秋の社日も雑節に数えられていたが,現行暦では除かれている。

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百科事典マイペディア 「雑節」の意味・わかりやすい解説

雑節【ざっせつ】

節気以外に季節の目安として設けられた特定の日または期間。天球上の太陽の位置によって決められ,農漁業等の目印に使われた。節分土用二百十日入梅八十八夜半夏生(はんげしょう),彼岸など。
→関連項目二十四節気

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日本文化いろは事典 「雑節」の解説

雑節

雑節とは、五節句・二十四節気以外の、季節の移り変わりの目安となる日の総称です。農業に従事する人々は二十四節気(中国で作られた暦)では十分に季節の変化を読み取れないため、その補助をする為に考えられた日本独自の暦です。雑節が考 え出された背景には、農家が季節の移り変わりを正確に理解できれば、農作物に多大な損害を出さずにすむという自然現象と農業の深い関係がありました。例え ば「もうすぐ八十八夜だから、霜が降りてくる前に対策をしよう」というわけです。主に、節分(2月3日)・八十八夜〔はちじゅうはちや〕(5月1日頃)・入梅〔にゅうばい〕(6月11日頃)・半夏生〔はんげしょう〕(7月2日頃)・二 百十日〔ひゃくにちとうか〕(9月1日頃) ・土用(1月17日・4月17日・7月20日・10月20日頃)・彼岸〔ひがん〕(3月20日・9月23日頃)などのことです。雑節は農業に従事する人たちの生活の知恵の結晶ともいえるでしょう。

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世界大百科事典(旧版)内の雑節の言及

【暦】より

…これらはいずれも文字暦とは異なり,長い間の経験の積重ねの中から生み出され伝承されてきたものといえる。 一方,文字による暦は五行説,九星六曜(大安,仏滅,友引,先勝,先負,赤口)などと結びついてさまざまな俗信や迷信を生んだほか,二十四節気や雑節(ざつせつ)(節分,彼岸,八十八夜,入梅,半夏生(はんげしよう),二百十日など)は民衆の季節感や年中行事の節目として大きな影響を与えている。日和見【和田 正洲】
【中国の暦】
 中国最古の王朝として知られる殷代には,その晩期の都であった安陽から多数の甲骨片が発掘され,それに刻まれた甲骨文の研究によって前1300年のころから太陰太陽暦が使用されていたことが立証された。…

【二十四節気】より

…日本の旧暦でも二十四節気,七十二候は早くから取り入れられたが,黄河流域と日本とでは気候の変化に伴う自然現象に1ヵ月ほどの差異があって一致しなかったため,江戸時代にはいわゆる本朝七十二候が作られた。雑節も設けられた。今日でも夏の場合にだけ残っている土用や立春の前日の節分などは,雑節の代表的なものである。…

※「雑節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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